ポイント付与禁止告示の背景と狙い

総務省は2024年6月28日付で、ふるさと納税ポータルサイト事業者が寄附者向けに独自ポイントを付与することを一律禁じる「令和6年総務省告示第203号」を施行しました。過熱するポイント競争を抑制し、寄附金の公平性を担保する狙いとされています。しかし、決済連動型ポイントは例外扱いとなったため、規制内容に整合性を欠くとの指摘が相次いでいるのです。

楽天が訴訟提起に踏み切った理由

楽天グループ株式会社は2015年の「楽天ふるさと納税」開設以来、自社負担で寄附者にポイントを付与し、制度普及に貢献してきました。自治体向けにDX支援やデータ活用ノウハウを提供し、寄附受付から問い合わせ対応までトータルサポートを実施。その取り組みを一夜にして見直しを迫られる告示改正は、民間と自治体の協力モデルを否定するものであると考え、行政訴訟による無効確認を選択しました。

告示が超える地方税法の委任範囲と憲法上の問題

楽天は訴状で、ポイント付与禁止が地方税法の委任範囲を逸脱し、憲法22条1項が保障する営業の自由を侵害すると主張。国会審議を経ずに行政告示で重要な制度設計を変更した点は、立法府の役割を軽視する行為にあたると訴えています。ポイント付与を募集方法のひとつと位置づける地方税法の趣旨を逸脱する規制は、法的根拠を欠く過剰規制に該当すると判断したのです。

クレジット決済連動ポイントとの整合性の矛盾

総務省は過熱抑制を理由に掲げる一方、クレジットカード会社や電子マネーの決済連動ポイントは引き続き認めています。楽天は「競争抑制が目的なら上限率の設定で十分対応できるにもかかわらず、ポータルサイトだけを狙い撃ちにしたのは不合理」と反論。決済系ポイントと同列に扱わない告示の構造的矛盾が、訴訟の主要な争点となっています。

EC事業者に迫られる施策見直しのポイント

業界全体としては、ポータルサイト独自のポイント施策に頼れない局面が続く見込みです。寄附誘導の新たな手法としては、返礼品や地域ストーリーを軸にしたコンテンツマーケティングの強化が挙げられます。また、決済パートナーと連携したキャンペーンや、データ分析に基づくターゲティングメールの高度化など、ポイント以外の付加価値創出がカギを握るでしょう。

裁判の行方と今後の立法動向への注目点

楽天は告示改正直後から反対署名活動を展開し、約2,952,819件の署名を首相官邸に提出済みです。今後は東京地裁での審理が本格化し、行政告示の違法性が争われます。並行して地方税法改正や国会審議の動きも予想され、制度の再設計が進む可能性があります。EC事業者は、裁判と立法の両面から情報収集を怠らず、自社施策の柔軟な見直しを図ってください。

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