
近年、ショート動画の普及に伴い急速に注目を集めているのが「ライブ配信」を活用したプロモーションです。特にリアルタイムで視聴者とコミュニケーションを取りながら商品を紹介する「ライブコマース」は、テレビショッピングやSNS広告とは異なる新たな販促チャネルとして市場に定着しつつあります。
しかし、ライブ配信の成功には単に映像を「流す」だけでなく、視聴者の購買心理を掴み、リアルタイムでの感情喚起や反応を促す工夫が求められます。また企業側には「何をKPIとし、どの業種でどう活用すべきか」という戦略設計も必要不可欠です。
このような背景から、株式会社PRIZMAは企業のマーケティング・PR担当者とライブ配信を視聴したことのある10代~60代の一般視聴者を対象に、「ライブ配信を活用したリアルタイムマーケティングに関する調査」を実施しました。今回はその調査結果の主要ポイントをご紹介します。
この記事の目次
「ついポチっちゃう」視聴者の購買行動と視聴スタイルの実態
圧倒的多数が「YouTube」でライブ視聴、InstagramやTikTokも定着
「ライブ配信を視聴するプラットフォームを教えてください」という質問に対し、『YouTube(85.3%)』が最多となり、『Instagram(38.5%)』『TikTok(28.2%)』がそれに続く結果となりました。

この結果から、YouTubeはライブ配信の視認性・信頼性・使い勝手の面で高い優位性を持ち、主要プラットフォームとしての地位を確立していることが明らかになっています。一方でInstagramやTikTokといったSNS型プラットフォームも一定の利用率を持ち、特に若年層を中心に「日常に溶け込んだ視聴体験」が広がっていることがわかります。
TwitchやIRIAMなどの専門プラットフォームは限定的な支持にとどまり、現状では"既存SNS内のライブ機能"に利用が集約されつつある傾向が見られます。今後、企業がライブ配信を活用する際には、YouTubeを基軸としながら、ターゲット層に応じてInstagramやTikTokなど、複数のプラットフォームを使い分ける戦略が主流になっていくと考えられます。
エンタメ性重視の傾向が鮮明に、「音楽・雑談」が人気ジャンル
「あなたがよく視聴するライブ配信のジャンルは?」という質問では、『音楽・ライブ(40.5%)』『雑談・Vlog(32.1%)』『ゲーム実況(26.2%)』が上位を占める結果となりました。

上位に挙がったジャンルはいずれも"没入感"や"ライブ感"のあるエンターテイメントコンテンツであり、視聴者がまず娯楽としてライブ配信を楽しんでいる実態が浮かび上がっています。
一方で、『食品・グルメ(16.3%)』『美容・コスメ紹介(14.7%)』『アパレル・ファッション(11.5%)』といった販促性の高いジャンルは相対的に低い割合にとどまりました。この結果は、購買誘導を目的としたライブ配信が必ずしも"視聴習慣の中心"にはなっていないことを示しており、販促系配信は「特定の関心層に届ける工夫」が重要であることを示唆しています。
視聴ジャンルの傾向からは、まず"エンターテイメントとして楽しめる設計"を起点に、その中で商品を自然に取り込むようなアプローチが求められていると考えられます。
配信者は「YouTuber」と「著名人」が二大人気
「視聴する配信者のタイプを教えてください」という質問では、『YouTuber(57.9%)』が最多で、『芸能人・著名人(41.3%)』『TikToker(19.4%)』『インスタグラマー(16.3%)』と続きました。

"親しみやすさ"と"信頼性"のバランスを兼ね備えたYouTuberの人気が際立っており、視聴者は自らの日常的な視聴習慣に根ざした配信者に惹かれる傾向があることがわかります。
また、『Vtuber・Vライバー(12.3%)』も一定の支持を集めており、没入型の世界観やアバターを通じたコミュニケーションに魅力を感じる層の存在も見逃せません。
商品紹介や販促においては、誰が伝えるかが重要な要素となるため、インフルエンサーや配信者の"タイプ選定"がコンバージョン率を大きく左右する可能性があります。実際の配信設計では、配信者のキャラクター性と商材の親和性を見極めた上でのキャスティングが重要となるでしょう。
商品購入に至った視聴者は3割超
「ライブ配信中に紹介された商品やサービスを購入したことがありますか?」という質問に対しては、『はい(15.9%)』『購入を検討したことがある(17.1%)』と答えた方が、合計で3割を超える結果となりました。

一方で『いいえ(67.1%)』が多数を占めていることから、ライブ配信は視覚的・感情的訴求力に優れる一方で、必ずしも即時の購買行動には結びついていない現状も明らかになっています。
とはいえ、一定割合の視聴者が"気になって購入・検討"している点は注目に値し、配信内容や演出の工夫次第ではリアルタイム販促の効果を高められる可能性もあるといえます。
【業界別】ライブ配信を活用したマーケティングの実態を調査!
6割以上が「ライブ配信施策を実施済み」
業種別にライブ配信施策の実施経験を調査するため「これまでにライブ配信を活用したプロモーション施策を行ったことはありますか?」と質問したところ、『EC・小売(67.5%)』『エンタメ・メディア(68.3%)』『旅行・観光(66.7%)』業界が高い実施率を示しました。

これらの業界では、商材やサービスの"見せやすさ"や"体験の訴求しやすさ"といった特性が、ライブ配信との相性の良さにつながっていると考えられます。
『美容・健康(60.9%)』『教育(57.1%)』業界でも6割前後が実施済みと回答しており、実演や解説型コンテンツを軸とした販促手法として業界全体に浸透しつつあることがわかります。
業界ごとに導入率に差が生じる背景には、費用対効果や表現手法の適合性など、それぞれの業種特性に応じた戦略的ハードルの違いがあると考えられます。
業種別に異なる「重視KPI」、購買重視派も多数
「ライブ配信において重視した、または重視したいKPI・目的を教えてください」という質問では、『商品・サービスの認知拡大』が全体的に高く、特に『EC・小売(74.6%)』業界で際立つ結果となりました。

『エンゲージメント(コメント・いいね等)』は『エンタメ(55.0%)』『美容(50.0%)』業界など感情的な接点を重視する業種で支持される傾向が見られ、『購買促進』は『旅行(56.3%)』『教育(50.0%)』など、成果指標を重視する業界で高い関心が示されました。
このように、ライブ配信の目的設定は業種によって大きく異なり、「どのKPIを優先するか」を明確に定めた上で施策設計を行う必要があります。ブランド構築よりも"即効性ある結果"を求める傾向がある現段階においては、ターゲット層や商材特性をふまえた目標設計が成果を左右すると考えられます。
ライブ配信は「見る」から「動かす」へ
今回の調査から、ライブ配信は「楽しむもの」として定着しつつも、確実に「売るための手段」へと進化している様子が明らかになっています。
視聴者側ではYouTubeを中心としたエンターテイメントコンテンツとしての視聴体験が主流を占め、配信者の信頼性や個性も購買意欲に大きな影響を与えていることがわかります。
一方、企業側では業種ごとに導入状況や重視するKPIが異なり、「どの目的で・どのプラットフォームを・どう活用するか」といった戦略的な判断が求められる段階に入っています。
ライブ配信は単なる動画施策ではなく、視聴者の"感情と行動"をつなぐリアルタイムの販促装置として機能し始めています。今後は、購買導線の設計力、配信者との連携、視聴者とのインタラクションの演出など、総合的な施策設計力が「ついポチっちゃう」仕掛けの成功を左右する重要なポイントとなるでしょう。
調査概要
【調査テーマ】ライブ配信を活用したリアルタイムマーケティングに関する調査
【調査期間】2025年5月20日(火)~5月21日(水)
【調査方法】PRIZMAが提供する調査PR「PRIZMA」によるインターネット調査
【調査対象】企業のマーケティング・PR担当者/ライブ配信を視聴したことがある10代~60代までの男女
【調査人数】509名
【モニター提供元】PRIZMAリサーチ
調査設問
Q1. ライブ配信を視聴するプラットフォームを教えてください
Q2. あなたがよく視聴するライブ配信のジャンルは?
Q3. 視聴する配信者のタイプを教えてください
Q4. ライブ配信中に紹介された商品やサービスを購入したことがありますか?
Q5. ライブ配信中に紹介された商品・サービスを「購入した」「購入を検討した」理由を教えてください
Q6. 貴社の業界を教えてください
Q7. これまでにライブ配信を活用したプロモーション施策を行ったことはありますか?
Q8. ライブ配信において重視した、または重視したいKPI・目的を教えてください
Q9. ライブ配信中に実施した、または実施してみたいリアルタイム施策を教えてください
Q10.ライブ配信した結果、どういった効果を得られましたか?
※原則として小数点以下第2位を四捨五入し表記しているため、合計が100%にならない場合があります。
出典元:株式会社PRIZMA プレスリリース