株式会社帝国データバンクが全国の企業1,227社を対象に2025年夏季賞与に関するアンケート調査を実施し、その結果を発表しました。調査によると、夏季賞与の正社員1人当たり平均支給額は前年から1.8万円増加し45.7万円となりましたが、企業規模間での格差が浮き彫りになっていることがわかります。
【調査概要】
調査期間:2025年6月6日~6月10日(インターネット調査)
有効回答企業:1,227社
※ボーナス、一時金など含む
※外れ値は統計的に判定した上で除外しています
この記事の目次
企業の3割で1人当たり平均支給額が前年より「増加」
帝国データバンクの発表によりますと、2025年の夏季賞与(ボーナス、一時金など含む)の支給状況について、従業員1人当たり平均で「賞与はあり、増加する」と回答した企業の割合は33.7%(前年比5.8ポイント減)となっています。「賞与はあり、変わらない」と回答した企業は37.0%(同2.8ポイント増)、「賞与はあるが、減少する」は12.0%(同0.7ポイント増)でした。
これらを合計すると、『賞与あり』の企業は82.7%となり、前年(85.0%)から2.3ポイント低下しています。一方、「賞与はない」と回答した企業は13.0%(同2.7ポイント増)という結果になっています。

企業規模によって異なる賞与増加の傾向
調査結果を規模別に見ると、「賞与はあり、増加する」企業の割合は、「大企業」が38.4%と全体平均(33.7%)を4.7ポイント上回っています。一方、「中小企業」は33.0%、「小規模企業」は27.0%と相対的に低い水準となっており、特に「小規模企業」は「大企業」より11.4ポイント低くなっています。この結果からは、依然として企業規模間での格差が見られることがわかります。

賞与に関する企業からの声
「賞与が増加する」企業からの声
「賞与はあり、増加する」と回答した企業からは、「売り上げ・利益が順調であることによる還元と、物価上昇への対策」(不動産業)といった業績改善による従業員への還元を理由として挙げる声が多く聞かれたとのことです。
また、「営業利益は2024年と比べて大幅減となったが、人材の確保と従業員のモチベーションアップのために賞与を増やす」(機械・器具卸売業)というように、業績が改善していなくても、物価高騰の中で人材確保・定着のために賞与を増額する企業も少なくないようです。
さらに、「支給月数は変わらないが、ベースアップがあるためボーナスの支給額は増加する」(建材・家具、窯業・土石製品製造業)など、ベースアップに連動して賞与も増額になるケースも見られるとのことです。
「賞与が変わらない・減少する」企業からの声
一方、「賞与はあり、変わらない」および「賞与はあり、減少する」と回答した企業からは、「業績が低迷しているため、賞与は出しているものの現状維持で精一杯」(紙類・文具・書籍卸売業)といった声や、「原材料・エネルギー価格の高騰や人件費の上昇、消費マインドの低下による売り上げ減などで業績が悪化。多く出してあげたいが出す余裕がない」(繊維・繊維製品・服飾品製造業)のように、各種コストの上昇などによる業績の圧迫を理由に挙げる企業が一定数あったことが報告されています。
夏季賞与の正社員1人当たり平均支給額は、前年比1.8万円増の45.7万円
調査によれば、2025年の夏季賞与の支給額(正社員1人当たり平均)について、「30万~50万円未満」の企業の割合が34.8%で最も高くなっています。次いで「50万~75万円未満」(24.7%)、「15万~30万円未満」(21.8%)が2割台で続いています。全体平均は45.7万円となり、2024年(43.9万円)から1.8万円増加したことがわかります。

総括:賞与支給の二極化が進む
帝国データバンクのアンケート調査の結果から、2025年夏は8割を超える企業が従業員に何らかの賞与を支給する予定であることが明らかになっています。しかし、賞与が増加する企業は前年から6ポイント近く低下し33.7%となった一方、賞与が変わらない、または減少すると回答した企業の割合はそれぞれ上昇しています。
賞与を据え置き、または減らす企業の多くは、原材料費や人件費など各種コストの上昇のほか、需要の低迷などによる収益の圧迫を理由として挙げていました。また、「トランプ関税などで先行きが不透明なため、夏は控えめに支払い、関税の影響がなければ夏の不足分を冬で支払う」(情報サービス業)といった声も寄せられており、アメリカの関税政策などの先行きが見通せないことから賞与の支給額が抑制されるケースも見られるとのことです。
一方、金額ベースでみると、正社員1人当たりの賞与の平均支給額は前年比1.8万円増の45.7万円と増加傾向となっています。業績の改善や人材確保・定着率の向上を理由に賞与を増額する動きのほか、「ベースアップに連動して賞与も増額となった」との声も複数寄せられており、近年の「賃上げの流れ」もその背景にあると考えられます。総じて見ると、夏季賞与の支給は企業の間で二極化の兆しが見えているようです。
帝国データバンクは、今後は物価の高騰による企業収益のさらなる圧迫に加え、先行き不透明感の強まりに伴い、賞与を含め賃金の引き上げが難しくなることが懸念されるとしています。深刻な人手不足の中、企業が人材確保と定着率の向上を図るためには「賃上げ」の継続が必要であり、その原資を増やすための経営改善が求められ、それをサポートする国の多方面にわたる支援策の実施も重要であると指摘しています。
出典元:株式会社帝国データバンク プレスリリース