ECモールの市場動向データを提供する株式会社Nint(本社:東京都新宿区、代表取締役:吉野順子、以下「Nint」)は、中国ECビッグデータサービス「任拓情報通」を利用し、上海ロックダウンがEC市場においてどのような影響を及ぼしたか分析し、レポートを発表しました。

新型コロナウイルス感染拡大の影響で、中国・上海市では3月末から始まったロックダウン(都市封鎖)が5月25日現在、今なお続いています。上海に所在する日系企業などで構成される上海日本商工クラブが5月5日に発表した「上海市封鎖管理による事業への影響等に関する実態把握(第2回)」(https://jpcic-sh.org/uploads/mail_attachment/1651802901.pdf)によると、上海市を中心に生産拠点を持つ日系企業の約6割が工場を全く稼働できておらず、操業回復にあたっては約9割の企業が物流網の回復を課題として挙げています。また4月22日以降、日本郵政はEMSを含む国際郵便の引受けを停止するなど、ロックダウンは生産、物流面を中心に実体経済に様々な影響を及ぼしています。

当レポートのデータ範囲、抽出期間、内容、元データは以下のとおりです。
【データ範囲】中国主要ECプラットフォーム(JD、天猫(中国国内及び国際)、淘宝網(中国国内及び国際))
【データ期間】2022年4月1日〜4月末日(速報値)及びその前月比、前年比
【データ内容】当該期間における主要カテゴリの流通金額及び流通量
【データ元】Nintグループが運営する任拓情報通サービス

第一部:主要ECプラットフォーム全体の比較
・モール全体で2022年は4月の流通金額は、例年よりも減少。特にAlibabaの減少が顕著。物流の一部停止が影響か
 1.モール全体における4月の流通金額の前月比

まず、主要モール全体(JD、天猫(中国国内及び国際)、淘宝網(中国国内及び国際)の4月の流通金額は3,426億元(日本円:約6.8兆円)で、3月と比べ16.0%の減少でした。3月には「女神節」(3月8日国際婦人の日)という大型のECキャンペーンがあり、例年4月は3月に比べて減少する傾向があり、2021年も12.9%減少していましたが、今年はより顕著な減少となっています。
(*天猫および淘宝網をまとめて以下、Alibabaと表記)

表①


2.モール別における4月の流通金額の前月比
下記表②のように、AlibabaとJDを比較すると、Alibabaの4月流通金額が2,517億元(日本円:約5.0兆円)で、JD 4月流通金額が909億元(日本円:約1.8兆円)でした。それぞれ3月流通金額と比較すると、Alibabaは536億元の減少(前月比-17.5%)、JDは117億元の減少(前月比-11.4%)でした。ロックダウンによる物流の一部停止から影響を受けているのではないかと考えられます。

表②


第二部:中国国内ECと越境ECの影響比較
・海外からの物流が規制されるも、越境ECの流通金額は微減に留まる

中国国内でオミクロン株による新型コロナウイルス感染症の拡大で、特に海外からの物流が厳しく規制される傾向があり、越境ECにも影響があるのではないかと考えられました。ただ、実際のデータ(天猫国際及びJD海外旗艦店等)では、越境ECの流通金額前年比は3月0.4%と微増、4月0.5%と微減という結果でした。一方、中国国内ECデータでは前年比3月8.4%減少と4月11.8%減少で、越境EC全体はまだ現時点では大きな影響を受けてはいない結果となりました。しかし、今後保税区にある在庫不足や物流問題が顕在化する可能性があると考えられます。

表③

 
第三部:主要カテゴリ別の影響比較
・食品、マタニティ/ベビー類、コスメ、医療保健類のカテゴリでは医療保健類カテゴリのみが前年比プラス成長

回中国都市部ロックダウンがEC市場へ与える影響を分析するため、日常生活に影響の大きい食品を始め、マタニティ/ベビー類、コスメ、医療保健類の4つのカテゴリデータを分析対象にしました。

120214月との比較結果
下記表④の通り、4つのカテゴリ内で今年4月の流通金額が前年同期よりプラス成長していたのは、医療保健カテゴリのみでした。健康意識向上のためサプリメントや健康食品などの購入が増えたのかもしれません。
国内ECと越境ECを分けて見ると、マタニティ/ベビー類の越境チャネルは去年より増えていました。特にJDでは国内/越境問わず、流通金額流通量とも前年同期より増加しています。コロナやロックダウンにかかわらず、品質が重要視されている必要品として需要が増えたるのでしょう。
半面、コスメは大きく流通金額がダウンしました。外に出る機会がないことから化粧品などを購入する人が減ったのではないかと思われます。

表④


220223月との比較結果
主要4カテゴリの2021年および2022年4月分の流通金額前月比を見ると、コスメとマタニティ/ベビー類の4月売上は3月からの減少率は去年より大きかったです(コスメ-4.8ポイント、マタニティ/ベビー-1.4ポイント)。
一方、食品ドリンクと医療保健カテゴリの4月流通金額前月比は去年より好転しています(食品ドリンク+2.3ポイント、医療保健+2.0ポイント)。コロナウイルスによる感染症の拡大により、自宅で食事する機会が増え、食品やドリンクをオンラインで購入する需要が増えたと想定されます。

表⑤


第四部:店舗運営の地域拠点による影響差
・ロックダウンはEC運営に影響を与え、上海地域のオンライン店舗の売上が大幅ダウン

Alibabaプラットフォーム上で上海地域として登録されているオンライン店舗(天猫スーパーを除く)に限定し、ロックダウンの影響が店舗運営上に影響を及ぼしているかを分析しました。まず、4月時点で所在地が上海として登録されている店舗の流通金額は全体でのシェアは4.5%です。4月における全国平均の昨月対比が17.5%増に対し、上海平均が39.5%減で上海地域における落ち込みが激しく、ロックダウンの影響がEC運営上に影響を及ぼしていることがわかります。

表⑥


第五部:好調店舗もある
・上海のオンライン店舗でありながら、他地域の消費により大きく伸長した店舗も

ロックダウン下となった2022年4月、上海地域で運営されているオンライン店舗の前年同月比が39.5%減の中、大きく売り上げを伸長した店舗もありました。そこで、上海運営の流通金額上位の前年同月比でプラス成長した店舗を見てみると、国産品(中国国内製造)であることが多く、またスキンケアブランドにおいては新興ブランドが目立ちます。上海におけるロックダウンによって中国全体の景気後退が議論されていますが、ミクロな視点に立てば上海地域の消費に頼らずに他地域の消費によって大きく成長できるケースもあることが分かります。

表⑦

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