
株式会社パーソル総合研究所(本社:東京都江東区、代表取締役社長:岩田 亮)は、企業における従業員サーベイの実態と課題を解明し、効果的な活用に向けた知見を得ることを目指して、「従業員サーベイに関する定量調査」を実施しました。
今回の調査により、従業員サーベイの実施率が76.7%に達し、過去5年以内に導入を開始した企業が52.8%を占めるなど、近年急激に普及が進んでいる状況が判明しています。しかしその一方で、従業員の45.9%が「これまで回答しても変化を感じない」と回答し、44.5%が「形式的な取り組みに感じる」と答えており、サーベイの広がりとともに機能不全や形骸化という問題も浮かび上がってきています。
本調査では、従業員サーベイの実施状況や人事担当者・従業員それぞれが直面している課題に加えて、サーベイの有用性を向上させる要素についても分析を行い、効果的な運用に向けた重要なポイントを明らかにしています。
主なトピックス
従業員サーベイの普及と実態
1. 従業員サーベイ実施率は76.7%、過去5年以内に開始した企業は52.8%
従業員サーベイの導入は多数の企業で進展しており、実施率は76.7%に達しています。さらに注目すべきは、過去5年以内に開始した企業が52.8%を占めていることで、ここ数年において急速に普及が進んでいる実態が明確になっています。
2. 「エンゲージメント向上」が最大目的、実施サーベイ数は平均3.25種類
サーベイを実施する最大の目的は「従業員のエンゲージメント向上」で64.8%となっています。また、企業はエンゲージメント・サーベイ、従業員満足度調査、組織風土調査、働きがい調査など、多様なサーベイを組み合わせて活用しており、実施しているサーベイの種類は平均3.25種類(年間)に及び、4種類以上実施している企業も27.0%存在しています。

サーベイの機能不全・形骸化
3. 従業員の45.9%が「回答しても変化を感じない」、44.5%が「形式的な取り組みに感じる」
従業員から見たサーベイ全体における課題として、「これまで回答しても変化を感じない」が45.9%、「形式的な取り組みに感じる」が44.5%という結果となっています。サーベイの普及が進展する一方で、機能不全や形骸化という深刻な課題が明らかになっています。

4. 人事と従業員でサーベイの目的認識に大きなギャップ
サーベイの実施目的に関して、人事担当者と従業員の認識を比較したところ、大きな差異が見られました。従業員側はサーベイの目的を十分に把握しておらず、人事担当者との認識ギャップが顕著になっています。
5. サーベイ結果の活用は「経営会議での報告」が69.8%で最多
サーベイ結果の活用方法としては「経営会議での報告」が69.8%で最も多くなっています。その一方で、現場における対話や人的資本開示への活用については約半数程度にとどまっている状況です。

6. パフォーマンスや継続就業意向等が低い層ほど"答えていない"
サーベイへの無回答経験を持つ従業員は、そうでない層と比較してパフォーマンスや継続就業意向が低く、暴言や叱責、意思疎通の困難といった職場環境の悪さも特徴として確認されています。

機能不全が起きる背景
7. サーベイの有用感を下げる要因は「会社の本気が見えない」「どうせ変わらない」
多変量解析の結果、「会社が本気で取り組んでいると感じない」「どうせ変わらないという諦めがある」「質問内容が自社の実情に合っていない」などが、有用感を低下させる要因として抽出されています。

機能不全を乗り越えるポイント
8. サーベイの有用感を高める鍵は「経営本気度認知」「結果の公平性」「本音回答意欲」
サーベイの有用性を向上させる要素として、「経営本気度認知(経営が本気で動いている)」「結果の取り扱いの公平性(公正・平等に結果が扱われている)」「本音回答意欲(安心して本音で答えられる)」の影響が特に大きいことが分かっています。企業側と従業員側双方の本気度が重要であることが示されています。

主なトピックス(詳細)
従業員サーベイの普及と実態
1. 従業員サーベイ実施率は76.7%、過去5年以内に開始した企業は52.8%
従業員サーベイの導入は多数の企業で進んでおり、実施率は76.7%に達しています。加えて、過去5年以内に開始した企業が52.8%を占めており、近年における急速な普及の実態が明らかになっています。

2. 「エンゲージメント向上」が最大目的、実施サーベイ数は平均3.25種類
最も主要なサーベイについて実施目的を聴取したところ、「従業員のエンゲージメント向上」が64.8%で最上位となっています。続いて「組織風土・組織内コミュニケーションの改善」が挙げられています。自社の組織や従業員の心理的・質的な側面を数値化するために実施していることが確認できます。
また、企業はエンゲージメント・サーベイ、従業員満足度調査、組織風土調査、働きがい調査など、複数のサーベイを併用しており、実施しているサーベイの種類は平均で3.25種類(年間)となっています。1種類のみの企業も18.4%ある一方で、4種類以上実施している企業も27.0%存在します。3万人規模以上の企業では平均で4.2種類を超えています。

サーベイの機能不全・形骸化
3. 従業員の45.9%が「回答しても変化を感じない」、44.5%が「形式的な取り組みに感じる」
従業員から見たサーベイ全体の課題は、「これまで回答しても変化を感じない」(45.9%)、「形式的な取り組みに感じる」(44.5%)が上位となっています。実践的な意味の無さを強く感じている状況です。
4. 人事と従業員でサーベイの目的認識に大きなギャップ
サーベイの実施目的について、従業員側の認識と人事側の認識を比較しています。人事担当者が狙う多様な目的に対して、従業員側はサーベイの目的をそもそも理解していないという差が明確に見られました。また、「コンプライアンス」といった守りの目的として理解されていることも分かります。
5. サーベイ結果の活用は「経営会議での報告」が69.8%で最多
サーベイ結果の活用方法としては、「経営会議での報告」が69.8%と突出しています。一方で組織変革や職場対話などの実行フェーズは約半数にとどまっており、活用が報告・共有に偏る傾向が見られます。

6. パフォーマンスや継続就業意向等が低い層ほど"答えていない"
サーベイの回答率は、「ほぼ全員回答」が56.2%と過半数を超えています。平均回答率は85.6%で、無回答率は14.4%になります。なお、従業員規模が小さいほうがやや回答率は高い傾向がありますが大きな差はありません。
無回答経験のある23.2%の従業員の特徴を抽出したところ、無回答者は、そうでない層と比較してパフォーマンスを発揮しておらず、継続就業意向が低いことが分かっています。暴言や叱責、意思疎通の困難など、職場環境の悪さも特徴として見られます。

無回答者は、「数値としてのみ把握」(29.2%)、「区別していない」(26.4%)が中心であり、無回答を積極的に分析する運用は少ない状況です。その取り扱いも、「回答率の注記のみ」(35.8%)、「特に考慮していない」(32.4%)が中心であり、無回答の含意を分析に反映する取り組みは限定的です。

機能不全が起きる背景
7. サーベイの有用感を下げる要因は「会社の本気が見えない」「どうせ変わらない」
多変量解析を行った結果、設計の課題、対話の課題、見え方の課題の3つの領域が有用感にネガティブに影響していました。設計では「質問内容が自社の実情に合っていない」、対話では「『どうせ変わらない』という諦めがある」、見え方では「会社が本気で取り組んでいると感じない」などが大きくサーベイの有用感にネガティブな影響を与えています。

機能不全を乗り越えるポイント
8. 有用感を高める鍵は「経営本気度認知」「結果の公平性」「本音回答意欲」
サーベイの有用性を高める要素として、「経営本気度認知(経営が本気で動いている)」「結果の取り扱いの公平性(公正・平等に結果が扱われている)」「本音回答意欲(安心して本音で答えられる)」の影響が特に大きいことが分かっています。企業側と従業員側双方の本気度が重要であることが示されています。
サーベイ有用感には、以下の8つの要素がプラスの影響を与えていました。

サーベイの質を上げる要素を、「可視化の質」「対話の質」「実装の質」「関与の質」の4つの領域で整理しています。

調査結果からの提言
日本企業の従業員サーベイは、近年急速に普及が進んでいます。多数の企業で定期実施が制度化され、実施すること自体はもはや当たり前の光景となっています。しかし、普及段階を終えた従業員サーベイは、すでに多くの企業で機能不全の段階に入っていることが今回示唆されています。その背景には、いくつかの典型的な問題があります。例えば、エンゲージメント概念が企業ごとに恣意的に定義されている点、分析・解釈を担う専門人材が不在である点、サーベイ結果が施策や意思決定に十分に結びついていない点などです。
そして最大の課題は、そうした課題が解決されないまま、実効性を欠いた運用が繰り返されていることにあります。
サーベイ実施の是非自体が戦略的に検討されず、人事の定期ルーティン作業になっているのが多くの企業の実情だと考えられます。その形骸化が従業員に伝わり、さらなる形骸化を生んでいることも今回の調査で明確になっています。
良いサーベイを実施するための要素は、「対話」や「分析」といった一つの要素で成り立っていません。整理したように、「可視化の質」「対話の質」「実装の質」「関与の質」の4つの領域にわたっており、全体を捉えながらメンテナンスすることが求められます。
「測ること」そのものが目的化したサーベイに、従業員はついてきません。普及期を終えた日本の従業員サーベイがより良い就業環境を創ることにつながるヒントになれば幸いであると同社は述べています。

出典元: 株式会社パーソル総合研究所














