株式会社マーケティング研究協会トレードマーケティング部は、消費財メーカーの営業活動の質向上を目的として「【小売業対象】メーカーとの商談・販促立案に関するアンケート2025年」を実施し、その調査結果を公表しました。この調査はスーパーマーケット・GMS・ドラッグストア・コンビニエンスストア・ホームセンター・ディスカウントストア業態の商品部門、販促部門・マーケティング部門、営業部門に在籍する方々を対象に行われたものです。
近年の小売業界では、競争環境の激化やM&Aによる企業規模の拡大、人材不足や働き方改革といった構造変化が進行しており、これらの変化がメーカーとの商談や協働のあり方に大きな影響を及ぼしています。小売業とメーカーの関係性も従来のような単純な取引関係から、より戦略的なパートナーシップへと変化しつつあるとのことです。
このような状況を踏まえ、メーカーからの提案に対する要望や商談内容の変化を明らかにするため、主に以下の7つの項目について綿密な調査が実施されました。
1)メーカーとの営業活動・商談について重視していることと満足度
2)メーカーからの提案について、イヤだと感じる内容
3)メーカー営業担当者の変化と要望すること
4)今後のメーカーとの商談の変化について(半期商談/定期商談)
5)小売業の方針の検討について 相談するメーカーや対応時期
6)販促について
7)メーカーの上層部との接点について
これらの項目は、単に現状を把握するだけでなく、今後のメーカーと小売業の関係性がどのように発展していくかを予測する上でも重要な視点となっています。特に近年はデジタル技術の進化により、消費者行動が大きく変化している中で、メーカーと小売業がどのように協力して市場に対応していくかが注目されているとのことです。
この調査からは、主に以下の4点が注目すべき傾向として浮かび上がってきたと報告されています。これらの傾向は、今後のメーカーの営業戦略や小売業との関係構築において重要な示唆を与えるものです。
この記事の目次
1. 他チェーンとの差別化につながる提案の重要性が高まっている
市場環境が不透明さを増す中で、同業態内でも好調企業と不調企業の差が拡大しています。このような状況は、単に外部環境の変化だけでなく、各企業の戦略的対応の差によるところも大きいと考えられています。
このような状況において、小売業はこれまで以上に「他社との差別化を実現できる企画や提案」を重視するようになっているようです。従来のような「業界標準」や「一般的な販促方法」よりも、自社の強みを活かした独自の展開が求められるようになってきています。
一般的な販促策やキャンペーンだけでは消費者に選ばれにくい時代となり、メーカーには独自性のある価値提供が強く求められるようになってきました。特に、地域特性やターゲット顧客層を深く理解した上での提案が高く評価される傾向にあるとのことです。
▼メーカーからの提案について「イヤだ」と感じる内容:1位:「他チェーンと同じ内容の提案」 34.5%
この結果からも明らかなように、単に「業界で一般的」というだけの提案は、小売業側からの評価が低くなっています。これは、差別化が企業存続の鍵となる現在の市場環境を反映した結果と言えるでしょう。
2. 商談の"早期化"が加速する見通し
差別化を図るため、プライベートブランドや留め型商品の企画など、準備に時間を要する取り組みが増加傾向にあります。これらの取り組みは、単純な仕入れ販売とは異なり、企画段階からメーカーと小売業が協働して進める必要があるとされています。
これに伴い、企画の実施までの期間が長期化し、メーカー側も小売業の年間スケジュールに合わせた早期の商談・提案が必要となってきています。以前のように直前の調整だけでは十分な準備ができず、企画の質が低下するリスクが高まっているようです。
人手不足の影響も相まって、小売業では「早めに全体を見通せる企画」へのニーズが強まっています。限られた人的リソースを効率的に配分するためにも、年間を通じた計画的な取り組みが重要視されるようになってきました。
この傾向は、メーカーと小売業の双方にとって、より戦略的な思考と長期的な視点での協業が求められていることを意味しています。早期の情報共有と綿密な計画立案が、成功への鍵となるでしょう。
3. メーカーの"ダイヤモンド営業"を志向する動きとは対照的に、小売業側の満足度は低下
小売業の再編が進み企業規模が拡大する中、メーカー側では"ダイヤモンド営業"を志向し、組織的な対応や関係性強化に注力する動きが見られます。ダイヤモンド営業とは、自社の複数部門と顧客の複数部門が多層的に接点を持ち、包括的な関係を構築する営業アプローチです。
しかし本調査では、特に大手小売業においてメーカーに対する満足度が低下していることが明らかになったとのことです。このギャップは、メーカー側の取り組みが必ずしも小売業のニーズに合致していないことを示唆しています。
この結果は、単に接点の数を増やすだけではなく、短期的な販売促進策ではなく、小売業の中長期的な成長に寄与する視点がメーカーに求められていることを示しています。形式的な関係強化ではなく、実質的な価値提供が重要視されているようです。

前回2023年調査時との比較を行った結果、小売業側としてメーカーの上層部と商談する機会は増加している一方で、その商談についての満足度は前回より20ポイント近く減少する結果となったことが報告されています。この結果は、単に上層部との接点を増やすだけでは不十分であり、その内容の質が問われていることを示唆しています。
4. 大手小売業ほどオペレーションのかかる施策に対して慎重な姿勢
大規模な売場変更や人手を多く割く必要がある販促施策については、「実施負荷に見合う効果があるのか」をより厳しく判断する傾向が強まっているようです。特に、一時的な売上増加だけでなく、持続的な効果が期待できるかどうかが重要な判断基準となっています。
特に大手小売業では、人手不足や働き方改革の影響から、オペレーション負荷の高い施策を敬遠する傾向があり、提案のタイミングや内容の精度がより重要となっているとのことです。店舗現場の負担を考慮した提案や、デジタル技術を活用した効率的な施策が求められるようになってきました。
この傾向は、小売業の経営環境が厳しさを増す中で、より効率的かつ効果的な施策への要望が高まっていることを示しています。メーカー側には、小売業のオペレーション事情を深く理解した上での提案が求められているようです。
調査概要
調査目的:
小売業の棚割や販促の方針立案、メーカーとの商談の実態を明らかにし、消費財メーカーの小売業への営業活動の質向上に役立つ情報を提供すること
調査方法:アンケート(選択/記述式・Web)
調査対象:小売業の商品部門、販促部門・マーケティング部門、営業部門 など
期間:2025年5月13日~6月30日
有効回答数:n=116
株式会社マーケティング研究協会

マーケティング研究協会は1960年の設立以来、マーケティング志向をもった人財・組織の育成と、お客様に選ばれ続けるための仕組みづくりを支援してきました。「マーケティング支援」「小売業への営業力強化(トレードマーケティング)」「店舗販売力強化」「BtoB営業力強化」という4つの領域を中心に、公開セミナー・企業内研修・コンサルティング等様々な手法でサポートを行っているとのことです。
同協会では、変化する市場環境の中で企業が持続的に成長するための支援に力を入れており、本調査もその一環として実施されたものです。小売業とメーカーの双方にとって有益な情報を提供することで、日本の消費財市場全体の活性化に貢献することを目指しているとのことです。
【会社概要】
株式会社マーケティング研究協会
105-0012 東京都港区芝大門1丁目2番8号 COSMIC BLDG 2F
代表取締役:平林 信吾
事業内容: 教育研修事業・マーケティングリサーチ事業・コンサルティング事業・公開セミナー事業・企画制作事業
設立: 1962年
出典元:株式会社マーケティング研究協会 プレスリリース












