なぜGA4では「direct」が多いのか?参照元問題を正しく理解する
この記事の執筆者

内海 賢一
mare interno合同会社 代表

GA4やサーバーサイドGTMを中心に、EC事業者の計測基盤整備とデータ活用を支援。
Google AnalyticsやBigQuery、Looker Studioを用いた可視化・改善提案を得意とし、これまで大手飲食チェーンやメーカーECなど、幅広い企業のデータ整備を手掛けてきた。
「データで航路を描く」をテーマに、Web解析を“実務に落とし込む”視点で発信中。
詳しくは公式サイトをご覧ください。
https://mare-interno.com

はじめに

近年、「データドリブン経営」という言葉をよく耳にします。
ECやD2Cなど、オンラインで販売を行う事業者にとっても、アクセス解析や広告データを活用した意思決定は欠かせません。

しかし現場では、GA4のレポートを開くと「参照元がdirectばかり」「どこから来たのかわからない流入が多い」といった課題に直面することが少なくありません。
せっかくデータをもとに判断しようとしても、その“足元のデータ”が揺らいでいては、正しい分析はできません。

本コラムでは、GA4で「direct」が多くなる理由と、その背景にある仕組みを整理し、今日から取り組める改善策を紹介します。

なぜdirectが多いのか

GA4で「参照元/メディア」を確認すると、流入の多くが「(direct)/(none)」と表示されることがあります。この“direct”とは「参照元が不明な訪問」を意味し、ブラウザやアプリがどこから来たのかという情報(リファラ)を渡していないときにカウントされます。

では、なぜそんなに多くなるのでしょうか。主な原因は次の2つです。

1. リファラが欠落する環境が増えている

代表的なのが、LINEやInstagramなどのアプリ内ブラウザです。
これらはセキュリティやプライバシー保護の観点から、アクセス元情報を外部サイトに渡さない仕組みになっています。

そのため、実際は例えば「LINE経由」であっても、GA4上では「direct」と記録されてしまいます。

2. メールやQRコードなど、参照元情報(UTM)が付いていないリンク

メルマガやDMにURLを貼る際、UTMパラメータを付与していない場合も同様に参照元がわからなくなります。また、店頭やチラシに掲載したQRコードからのアクセスも、設定がなければ「direct」として処理されます。

参照元問題が引き起こす課題

参照元が正しく取得できないと、マーケティング全体にいくつかの影響が出ます。

  • 施策の評価が難しくなる
    どのSNS投稿やキャンペーンが成果につながったのかが見えにくくなり、改善の方向性が定まりません。
  • 広告・コンテンツの費用対効果が判断できない
    媒体別の効果を比較する際、誤ったデータに基づいて意思決定が行われてしまう可能性があります。
  • 社内で「GAの数字が信用できない」という不信感が生まれる
    担当者が分析を重ねても、施策の判断や次の打ち手につながらない——これが多くの現場で起こっている“データドリブン停滞”の一因です。

改善のための具体策

参照元問題は、決して特殊な知識がないと解決できないものではありません。
今日から始められる2つの実践策を紹介します。

1. UTMパラメータの徹底

SNS投稿、メール、QRコードなど「どこから来たかわからない流入」を減らすには、まずUTMの付与をルール化することが重要です。
さらに複数人で運用している場合は、命名規則をドキュメント化しておくと効果的です。

なお、UTMパラメータは外部流入を識別するための仕組みであり、自社サイト内のリンクに付与するとセッションが分断されてしまう点には注意が必要です。
特にECサイトなどで商品ページ間の遷移にUTMを付けてしまうと、誤って「自社ドメイン/referral」として計測される場合があります。

2. GA4の設定見直し(ECサイトの場合)

ECサイトでは、外部の決済ドメインや予約システムのドメインを「参照元除外リスト」に追加しておくことが重要です。

これを設定しないと、購入者が決済完了後に戻ってきた際に「payment.example.jp/referral」などが参照元として記録され、本来の流入元が失われてしまいます。
また、複数ドメインを運用している場合は、クロスドメイントラッキングを設定し、セッション分断を防ぎましょう。

補足:誤った参照元で上書きされるケースにも注意

directが「参照元が取れない」問題だとすれば、もう一つのよくある落とし穴が「誤った参照元で上書きされる」ケースです。

ECサイトでは、購入フローの途中で別ドメイン(決済サービスや予約システムなど)を挟むことが多く、これらを参照元除外リストに設定していないと、戻ってきた際に不要な参照元が記録されてしまいます。
この状態では、どの広告や施策が購入に貢献したかを正しく追えず、結果的にdirect問題と同じように分析の精度を下げてしまいます。

まとめ

GA4で「direct」が多いのは、単なる計測のバグではなく、仕組み上の“情報の欠落”によるものです。
その背景を理解したうえで、UTMや設定を整備すれば、参照元データの信頼性は大きく向上します。

データドリブンの第一歩は、派手なダッシュボードを作ることでも高度なAI分析でもなく、「データの出どころを正しく理解すること」にあります。足元の計測を整えることが、未来の正しい意思決定を支える土台になるのです。

mare interno合同会社
https://mare-interno.com

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