
三井倉庫ロジスティクス株式会社(本社:東京都中央区、代表取締役 社長執行役員:石川 輝雄)と株式会社T2(本社:東京都千代田区、代表取締役CEO:熊部 雅友)が、2025年9月29日より、国内で初めてクロスドック方式と自動運転トラックを組み合わせた混載輸送の共同実証を開始することが発表されました。この取り組みは、T2が目指すレベル4自動運転トラックによる幹線輸送を見据え、物流効率化に向けた画期的な試みとなります。
この実証では、物流拠点に集まる複数の荷主の貨物を在庫として保管せず、拠点内でそのまま仕分けて出荷する「クロスドック」の仕組みと、「自動運転トラック」を組み合わせることで、トラックの稼働率と積載率の向上を目指しています。
物流業界では「2024年問題」などを背景にトラックドライバー不足が深刻化しています。こうした状況の中、三井倉庫ロジスティクスは2023年よりT2に資本参画し、複数の実証実験を通じて連携を強化してきました。また、2025年7月にT2が開始したレベル2自動運転トラックの商用運行にもユーザーとしていち早く参加するなど、両社はT2が2027年に実現を目指すレベル4自動運転トラックによる幹線輸送を見据えて、次世代に向けた持続可能な物流オペレーションの構築を進めてきたとのことです。
今回の取り組みでは、さらに効率的なオペレーション構築のため、自動運転トラックの稼働率と積載率を最大限高めることを重視しているとのことです。そこで、三井倉庫ロジスティクスが「GWC構想」で活用している「クロスドック」の仕組みと、T2の「自動運転トラック」を組み合わせて、複数の荷主の貨物を混載輸送する実証実験を共同で開始することになりました。

この記事の目次
実証実験の概要と特徴
この実証では、三井倉庫ロジスティクスの「座間物流センター」(神奈川県)と「彩都あかね物流センター」(大阪府)の2拠点それぞれに集められた荷主5社の貨物を仕分けし、T2のレベル2自動運転トラックに混載して両拠点間を幹線輸送します。両拠点内にクロスドックの機能を設けることで、自動運転トラックが神奈川から大阪に到着した後、次の貨物をすぐに積み込んで出発できるようにします。これにより自動運転トラックの稼働率を高め、混載による積載率向上の効果を検証するとのことです。
さらに、在庫保管機能を備えたDC(ディストリビューションセンター)である「彩都あかね物流センター」では、保管在庫も混載貨物として積み込むことで、積み合わせ貨物調整の容易性を検証します。また、物流拠点のオペレーションと自動運転トラックの発着スケジュールの連携についても検証が行われる予定です。
実証実験ではスワップボディも活用されます。スワップボディとは、特殊な荷役機器を必要とせずに、エアサスペンションにより車体と荷台を自力で分離することができるトラックのタイプです。これを活用することで、一部の貨物については1台の車両で複数の配送元を巡回する「ミルクラン方式」を採用し、自動運転区間と荷主拠点の発着地の間を一貫輸送できるかも検証されるとのことです。
このように、T2の自動運転トラックと、三井倉庫ロジスティクスが通常の物流オペレーションで活用する複数の手法を組み合わせた実証実験を実施することで、より効率的な集配送オペレーションや自動運転トラックの発着スケジュールの連携を図ります。そして、T2が目指すレベル4自動運転トラックによる幹線輸送でこの輸送方法を導入できるよう、改善点を抽出することを目的としています。
実証実験の詳細
時期 | 2025年9月29日~10月1日 |
場所 | 往路:座間物流センター(神奈川県)⇒彩都あかね物流センター(大阪府)
復路:彩都あかね物流センター(大阪府)⇒座間物流センター(神奈川県) 上記拠点を結ぶ高速道路一部区間および荷主各社の倉庫との間で実施 |
役割 | ・三井倉庫ロジスティクス:物流センターでのクロスドックオペレーション業務と荷主貨物の集配送業務の構築および混載の調整(計画化)
・T2:実証用車両提供および上記区間の運行 ・協力荷主企業5社:貨物の提供 |
荷主企業および積載貨物 | ・パナソニック オペレーショナルエクセレンス株式会社、パナソニックAP空調・冷設機器株式会社:業務用冷凍・冷蔵庫など
・株式会社ネイチャーラボ:ヘアケア・ボディーケア商品など ・ダイキン工業株式会社:家庭用エアコン ・株式会社ドトールコーヒー:コーヒー豆および店舗で使用する消費材 ・エレコム株式会社:IT関連製品など |
検証項目 | ・クロスドックと自動運転トラックを組み合わせた混載輸送の運用フローやオペレーションの確認
・上記輸送の有効性(特に効率化)と実現可能性の確認 |
自動運転トラックとクロスドックの組み合わせがもたらす可能性
今回の実証実験は、物流業界が直面するドライバー不足という課題に対して、テクノロジーと効率的な物流オペレーションを組み合わせた解決策の一つとして注目されています。レベル4自動運転技術が実用化されれば、特定の条件下で人間の介入なしにトラックが自律走行できるようになり、長距離輸送における人手不足の解消に大きく貢献する可能性があります。
また、クロスドック方式は、物流拠点での保管コストを削減し、貨物の流れをスムーズにすることで、リードタイムの短縮や物流効率の向上に寄与します。この二つの技術・手法を組み合わせることで、物流業界の抱える課題に対する包括的な解決策となることが期待されています。
なお、今回の実証実験で使用されるレベル2自動運転トラックは、ドライバーの監視のもとに行われる特定条件下での高機能自動運転システムを搭載しています。これに対し、将来的に目指されているレベル4自動運転は、特定の走行環境条件を満たす限定された領域において、自動運行装置が運転操作の全部を代替する状態を指します。
自動運転とクロスドックの用語解説
・レベル4自動運転:特定の走行環境条件を満たす限定された領域において、自動運行装置が運転操作の全部を代替する状態
・幹線輸送:工場で生産された商品を全国の配送拠点に主要な輸送ネットワークを通じて効率的に運ぶこと
・レベル2自動運転:ドライバーの監視のもとに行われる特定条件下での高機能自動運転
・GWC構想:複数のGWC(ゲートウェイセンター)と呼ぶ主要な物流センターを中心に、デジタル技術を駆使した輸配送ネットワークで各センターをつなぎ、物流全体を効率化する構想
・クロスドック:物流拠点に入荷した貨物を、保管せずに仕分け・積み替えをして即日出荷する物流手法
・スワップボディ:特殊な荷役機器を必要とせずに、エアサスペンションにより車体と荷台を自力で分離することができるトラックのタイプ
実証実験参加企業の概要
三井倉庫ロジスティクス株式会社
本社所在地:東京都中央区日本橋箱崎町19番21号 MSH日本橋箱崎ビル6階
代表者:代表取締役社長執行役員 石川 輝雄
設立日:1971年4月21日
事業内容:サプライチェーンソリューション事業(3PL/4PL/LLP)、テクニカルロジスティクス事業(配送・設置・工事など)、家電量販物流事業、国内外一貫物流事業、コーヒーシステムズ事業、商品の輸出入及び販売事業
株式会社T2
本社所在地:東京都千代田区内幸町二丁目2番3号 日比谷国際ビル1階
代表者:代表取締役CEO 熊部 雅友
設立日:2022年8月30日
事業内容:自動運転システムの開発、レベル4自動運転トラックによる幹線輸送サービス事業、幹線輸送に付随した関連サービス事業、その他関連サービス事業
物流業界の課題と今後の展望
日本の物流業界は深刻なドライバー不足に直面しており、2024年問題によってその状況はさらに悪化することが予想されています。こうした背景から、自動運転技術やAI、IoTなどのデジタル技術を活用した物流の効率化・省人化が急務となっています。
三井倉庫ロジスティクスとT2の今回の取り組みは、こうした課題に対する先進的な解決策の一つとして位置づけられます。将来的に自動運転技術が発展し、クロスドックのような効率的な物流オペレーションと組み合わさることで、持続可能な物流システムの構築が期待されています。
今回の実証実験の結果を踏まえて、両社は引き続き自動運転技術と物流オペレーションの最適な組み合わせを模索し、物流業界の課題解決に取り組んでいく予定です。
出典元:株式会社T2 プレスリリース