電通総研ら5社、広島県でデータ活用型観光マーケティングの実証実験を実施 - インバウンドから国内観光客向けに展開

テクノロジーで企業と社会の進化を実現する株式会社電通総研(本社:東京都港区、代表取締役社長:岩本 浩久、以下「電通総研」)、一般社団法人広島県観光連盟(以下「HIT」)、学校法人早稲田大学(以下「早大」)、NTTコミュニケーションズ株式会社(以下「NTT Com」)、株式会社インテージ(以下「インテージ」)は、データを活用した観光マーケティングの実証実験(以下「本実証」)を2025年3月より広島県で実施しており、先行してインバウンド観光客の動態把握を行ったことが発表されました。その結果、誘客と消費促進に向けた施策立案へのデータ利活用の有効性が確認され、2025年6月より国内観光客を対象とした取り組みに展開されることになりました。

背景

HITは、これまでオープンデータなどを活用し、誘客と消費促進に向けた施策を実施してきましたが、活用するデータの量や質が十分ではなかったという課題があったそうです。そのため、観光客の属性、流入経路、周遊ルートなどの正確な把握が難しく、効果的な施策の実現および効果検証に課題を抱えていたとのことです。

これらの課題を解決するため、本実証では観光客の動態の詳細な把握・分析を行い、実際の誘客施策を実施しながら効果検証を行うことで、広島県の観光課題解決の実現に取り組んでいるようです。

本実証の概要

この実証実験では、既存のオープンデータに加え、NTT Comが提供するモバイル空間統計(NTTドコモの携帯電話のつながる仕組みから得られる基地局運用データを基に推計された統計データ)やドコモが保有する1億人規模の会員基盤データ(NTTドコモの携帯電話の回線契約者や各種サービスの利用者プロフィール、アプリで取得した位置情報など)、および電通総研が提供するソーシャルアナリティクスツール「QUID(クイッド)」を活用したSNS分析のデータを組み合わせています。

これにより、観光客の動態やSNS上での評価などを可視化し、それを基に立案した施策を実行するとともに、施策実施後のデータ分析を行うことでより効果的・効率的な施策の展開につなげる取り組みとなっています。

本実証では、以下①~③の取り組みが行われています。

① データの収集・可視化

モバイル空間統計、ドコモデータ、アンケートやSNS分析による定性データなどを収集して、属性分析および来訪経路など動態を可視化します。これにより、観光客の行動パターンや嗜好をより詳細に把握することが可能になるとのことです。

② データの分析・施策の立案

収集したデータを基に、早大およびインテージにて各データの因果関係や課題を分析し、解決に向けた観光マーケティング施策を立案します。データに基づいた科学的アプローチにより、より効果的な施策の策定が期待されています。

③ 施策の実行・改善

サイネージやアプリ、ホームページ上で属性に応じたおすすめの観光スポットや周遊ルート、食事、お土産情報などを観光客に提案します。さらに、施策実施後の人流データを再度収集することで、行動変容などの効果を測定し、施策の課題抽出や改善策を検討するというPDCAサイクルを回していくとのことです。

インバウンド観光客向け実証の概要と主な成果

3月より先行して実施したインバウンド観光客の動態把握では、データの収集と可視化により、これまでのオープンデータだけでは把握できなかった来訪者の宿泊・日帰り客数などのデータ、およびSNS分析による広島県の観光地の評価を可視化することに成功したとされています。その結果、国別・月別での詳細の動態が明らかとなり、施策立案への有効性が確認されたようです。

インバウンド観光客向けの収集データのイメージ<インバウンド観光客向けの収集データのイメージ>

国内観光客向け実証概要

インバウンド観光客向け動態把握により、施策立案におけるデータ利活用の有効性が確認できたため、6月からは国内観光客向けに実証実験が展開されるとのことです。インバウンド観光客向けと同様に動態の把握を行うことに加え、来訪者の属性に応じた情報発信などの実際の施策が実行される予定です。

さらに、施策実行後のデータを収集して効果検証を行い、施策の改善を継続することで、より精度の高い誘客と消費促進の実現を目指すとしています。この一連のプロセスにより、データに基づいた効果的な観光マーケティングの実現が期待されています。

各社の役割

本実証実験における各社の役割は以下の通りとなっています。

  • 電通総研:ソーシャルアナリティクスツールを用いたSNS分析
  • HIT:広島県における観光課題の抽出、誘客施策の実行
  • 早大:誘客施策の立案、施策実施後の効果検証
  • NTT Com:人流データの可視化・提供、アンケートの設計・実施
  • インテージ:人流データおよびアンケートデータの分析

このように、各社がそれぞれの専門性や強みを活かし、連携しながら実証実験を進めています。データの収集から分析、施策立案、実行、効果検証までの一連のプロセスを、5社の協力体制のもとで実施しているとのことです。

今後の展開

本実証での観光マーケティングの精度向上により、広島県における観光客の増加や周遊・消費促進、満足度向上を実現し、地域の活性化を目指しているそうです。さらに、広島県以外の他エリアへの展開、および小売業や金融業での活用、スポーツチームでのファンマーケティングなど観光分野以外にも取り組みを拡大することで、より幅広い社会課題の解決・地域創生に貢献することを視野に入れているとのことです。

この取り組みは、データ活用による観光マーケティングの高度化の一例として注目されており、他の地域や分野への応用可能性も高いと考えられます。今後の展開に注目が集まります。

電通総研について

電通総研は、「HUMANOLOGY for the future~人とテクノロジーで、その先をつくる。~」という企業ビジョンの下、「システムインテグレーション」「コンサルティング」「シンクタンク」という3つの機能の連携により、企業・官庁・自治体や生活者を含めた「社会」全体と真摯に向き合い、課題の提言からテクノロジーによる解決までの循環を生み出し、より良い社会への進化を支援・実装することを目指しているとのことです。

テクノロジーや業界、企業、地域の枠を超えた「X Innovation(クロスイノベーション)」を推進し、これからも人とテクノロジーの力で未来を切り拓き、新しい価値を創出し続けるとしています。なお、電通国際情報サービス(ISID)は、電通総研へ社名を変更したとのことです。

出典元:株式会社電通総研 プレスリリース

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