株式会社帝国データバンクが、人手不足を起因とする倒産のうち、「従業員の退職を要因とした人手不足(従業員退職型)」による倒産の発生状況に関する調査・分析結果を公表しています。

同調査では、2024年以前のデータについても最新情報をもとに再集計が実施されているとのことです。

調査結果のサマリー

2025年に確認された人手不足を要因とする倒産のうち、「従業員退職型」に分類される倒産は124件に達し、前年の90件と比較して約4割の増加となったことが明らかになりました。この数値は初めて100件の大台を突破し、集計が可能となった2013年以降で最も多い件数を記録しています。業種別の内訳を見ると、「建設業」や老人福祉施設・IT産業を中心とした「サービス業」での発生が特に顕著でした。業績の悪化などを背景に賃上げを実施できない中小企業において、今後さらなる淘汰が進展する可能性が指摘されています。

なお、集計期間は2013年1月から2025年12月31日までとなっており、集計対象は負債1000万円以上の法的整理による倒産案件となっています。

従業員の転退職を起因とする倒産が初めて100件を突破し過去最多を更新

2025年に判明した人手不足倒産427件の内訳を見ると、従業員や経営幹部などの退職が直接的または間接的に起因した「従業員退職型」の倒産件数は、124件となりました。これは前年の90件から34件増加し、増加率は37.8%に上ります。年間の倒産件数が初めて100件を超え、集計可能となった2013年以降における過去最多を更新する結果となりました。

従業員退職型倒産の推移

業種別では建設業が最多、製造業も初めて20件を超過

2025年の「従業員退職型」倒産を業種別に分析すると、最も件数が多かったのは「建設業」で37件となり、全体の29.8%を占める結果となりました。建設業では、業務の遂行に必要不可欠な資格を保有する現場作業員に加え、営業担当者が相次いで退職したことにより、事業の運営が困難になったケースが多く見られました。次いで多かったのは「サービス業」の29件で、老人福祉施設やソフトウェア開発などのIT産業、美容室などの業界での発生が目立っています。また、「製造業」については21件となり、初めて20件を超えて過去最多の件数を記録しました。

具体的な倒産事例と背景要因

具体的な倒産事例を見ると、システム受託開発を手がけていたiTies(大阪、2025年12月破産)では、従業員の退職が相次いだことにより受注能力が低下し、外注によってその不足を補った結果、資金繰りが圧迫されて事業継続を断念する事態に至りました。このように、特に建設業やIT産業などの業界では、従業員の退職により外注に依存せざるを得なくなり、コストの増加によって収益確保が困難となった結果、資金繰りが悪化したケースが複数確認されています。さらに、専門的な知識や技術を持つ人材や部門の中心的な人物が退職したことで、業容の縮小を迫られたケースも見られました。

このほか、不動産仲介業を営むウィルプライズ(東京、2025年4月破産)の事例では、業績が悪化したことで給与の引き下げを実施した結果、従業員の退職が続き事業継続が困難となるなど、満足な給与水準を提供できないことが倒産の引き金となるケースも確認されています。

業種別の従業員退職型倒産

正社員の人手不足感は51.6%と高水準を維持

帝国データバンクが実施した「人手不足に対する企業の動向調査(2025年10月)」(2025年11月17日発表)によると、正社員の人手不足を感じている企業の割合は51.6%と高い水準にあることが明らかになっています。特に建設業や情報サービス業、精密機械、医療機械・器具製造など、「従業員退職型」の倒産が多く判明している業界において、人手不足感を持つ企業の割合が高い傾向が見られました。

待遇改善できない企業の人材流出リスクが深刻化

また、転職市場が活況を呈している中で、賃上げや福利厚生の改善によって優秀な人材を確保しようとする動きが広がっており、「待遇改善をしないことによる人材流出リスク」が中小企業を中心に高まっている状況です。その一方で、賃上げを実施したくても業績悪化などを理由に賃上げができない企業も多数存在しており、従業員に対して十分な報酬を支払う余力のない中小零細企業を中心に、「従業員退職型」倒産は今後も高い水準で推移する可能性があると指摘されています。

今回の調査結果は、人材の確保と定着が企業の存続において極めて重要な経営課題となっていることを改めて浮き彫りにする内容となっています。賃金や待遇面での競争力を維持できない企業においては、人材流出による倒産リスクがさらに高まることが予想され、中小企業を取り巻く経営環境の厳しさが一層増している状況が明らかになりました。

出典元:株式会社帝国データバンク プレスリリース

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