2025年世界Eコマースアプリ市場分析:Temuが首位維持、インド・アフリカなど新興市場が成長エンジンに

オンラインショッピングの世界は急速に変化しているようです。パンデミック時に急増したEコマースアプリ市場は、現在、新たな成長フェーズに突入していることが報告されています。ユーザー獲得が飽和状態に近づく中、業界の焦点は「新規ユーザー獲得」から「既存ユーザーの維持と体験向上」へとシフトしているとのことです。

Sensor Towerの最新レポートでは、2025年の世界Eコマースアプリ市場に関する包括的な分析が提供されています。この調査には、近年のEコマースアプリのダウンロード推移、主要市場における変化、人気アプリのランキング、デジタル広告のパフォーマンスなどが含まれており、世界的人気プラットフォーム『Temu』や地域をリードする『Blinkit』、『Naver Plus Store』の市場戦略と成功要因についても詳細に解説されています。

世界のEコマースアプリ市場:2019年から2025年までの年平均成長率は6.5%

Sensor Towerの調査によると、2019年から2025年にかけて、世界のEコマースアプリの年間ダウンロード数は43.6億から63.5億へと増加し、全体で45%以上の成長を記録したとのことです。これは年平均成長率にして約6.5%に相当するとされています。

2025年における世界のEコマースアプリ市場の成長は、成熟市場から新興地域へと重心が移動しているとレポートは指摘しています。アジアが引き続き市場をリードする一方で、ヨーロッパと北アメリカの成長は安定期に入り、ラテンアメリカ、アフリカ、中東といった地域が新たな成長エンジンとして台頭しているようです。

アジア太平洋地域においては、インドが引き続き主要な成長ドライバーとなっており、Eコマースアプリの新規ダウンロードを牽引しているとのことです。東南アジア市場も堅調な成長を続ける一方、中国市場は成熟段階に入り、競争の焦点はユーザー維持とサービス価値の向上へと移行していると報告されています。日本と韓国の市場も着実に成長を続けており、AIを活用したEコマース体験と会員エコシステムの構築が革新のポイントとなっているようです。

Temuが世界ランキングで首位維持、Blinkitはダウンロード成長率でトップに

中国発のグローバルEコマースプラットフォーム『Temu』は、複数の市場における強力な成長を背景に、世界のEコマースアプリダウンロードランキングと月間アクティブユーザー成長量の両部門で首位を獲得したことがわかりました。特にラテンアメリカ、アフリカ、中東などの新興市場での継続的な拡大により、プラットフォームのダウンロード数とユーザーアクティビティは共に上昇し、世界のEコマース市場におけるリーダーシップを強固なものとしているとレポートは伝えています。

一方、インドの急速配達サービス『Blinkit』は、「10分配達」モデルと地域生活サービスとの緊密な統合により、2025年のEコマースアプリダウンロード成長量ランキングで首位を獲得し、最も急速に成長している新興勢力としての地位を確立したとされています。この2つのプラットフォームの著しい成果は、世界の消費パターンが多様化していることを示しているようです。

中国のiOS市場では、『抖音商城(Douyin Mall)』が注目すべき躍進を見せ、ECアプリのダウンロードランキングとダウンロード成長量の両部門でトップに立ったと報告されています。ショート動画コンテンツとショッピング体験の融合により、同プラットフォームは多くの新規ユーザーを獲得するだけでなく、既存ユーザーの継続的な参加も促進しているとのことです。効率的なレコメンデーションアルゴリズムとパーソナライズされたショッピング体験により、『抖音商城』は競争の激しい中国EC市場で存在感を高め、ブランドプロモーションとユーザー獲得の重要なチャネルへと発展していると分析されています。

ソーシャルメディアが世界のショッピング業界デジタル広告の主要チャネルに

2025年の世界市場において、オンラインショッピングはデジタル広告支出が最も多い業界となっていることがレポートで示されています。2025年1月から10月の期間、アメリカ市場は約190億ドルの広告支出でトップに立ち、イギリスが37億ドルでこれに続いているとのことです。

各市場で共通しているのは、ソーシャルメディアプラットフォームがショッピングブランドのデジタル広告配信における主要チャネルとなっている点だとされています。特にFacebookとInstagramは、それぞれ70%以上の広告インプレッションシェアを誇っていることが報告されています。一方、日本市場では独自の傾向が見られ、LINEが主導的な地位を占め、2025年1月から10月の期間における広告インプレッションシェアは約50%に達しているようです。

Temu、世界累計ダウンロード数が12億を突破し、過去最高のアクティブユーザー数を記録

Sensor Towerのデータによれば、『Temu』は2023年から2025年にかけて3年連続で世界のショッピングアプリダウンロード数ランキングでトップの座を維持し続けていることがわかりました。北米、中南米、中東、アフリカ、日韓など複数の地域でショッピングアプリカテゴリのランキング首位を獲得しているこのアプリは、2025年10月時点で世界累計ダウンロード数が12億を突破したとのことです。さらに2025年8月には世界月間アクティブユーザー数が5.3億に達し、過去最高記録を更新したと報告されています。

特筆すべきは、アフリカやラテンアメリカなどの新興市場が『Temu』の世界的成長における新たな原動力となっている点だとレポートは指摘しています。ラテンアメリカは『Temu』の総ダウンロード数の約30%を占め、世界をリードしているとのことです。アフリカ市場も急速に台頭しており、ダウンロード数は前年比168%増と急増し、多数の新規ユーザーを獲得していると分析されています。

個別の市場を見ると、ブラジルは様々な課題がある中でも84%の成長を記録し、Temuにとって最大の単一市場となったことが報告されています。さらに注目すべきは、ナイジェリアでのダウンロード数が84倍という驚異的な成長を遂げ、世界第3位の市場に浮上したことだとのことです。これらの数字は新興市場における『Temu』のブランド力と成長可能性の高さを示していると評価されています。

インドのクイックコマース市場が急成長、Blinkitが業界の新星に

2025年、インド市場ではクイックコマース(即時配達)市場が急速な成長を遂げているとレポートは伝えています。『Blinkit』『Zepto』『bigbasket』『Instamart』『Flipkart』『Swiggy』など多数の大手プラットフォームがこのビジネスモデルに参入し、「10分配送」サービスを次々と展開しているようです。

中でも『Blinkit』は、データ駆動型の在庫管理システムと柔軟で効率的な地域密着型倉庫ネットワークを構築し、インドで最も急成長しているEコマースアプリへと発展したと報告されています。Sensor Towerのデータによると、2025年1月から10月にかけて、同アプリのダウンロード数は前年同期比165%増と驚異的な成長を遂げ、2025年10月時点での世界累計ダウンロード数は約1.8億に達しているとのことです。

『Blinkit』のユーザー層は主に都市部の若い男性が中心で、25〜34歳のホワイトカラー層が主要な消費層を形成しているとされています。女性ユーザーは全体の40%を占めていることが報告されています。また、『Blinkit』のコアユーザー層はインドの「即時消費とフードデリバリー」シーンと高い重複性を示しており、ユーザーの多くが強い即時消費傾向を持っていることが特徴だとレポートは指摘しています。

自社エコシステム(Bistro、Zomato)との統合強化と差別化されたユーザー体験(配達スピード、割引、商品品質)を通じて、『Blinkit』はインドの即時配達市場においてより強固なユーザーロイヤリティを築き上げることが期待されていると分析されています。

Naver Plus Storeが2025年の韓国市場でダウンロード首位のEコマースアプリに

韓国市場では、NAVERが2025年3月にリリースしたAI駆動型の独立ショッピングアプリ『Naver Plus Store』が大きな注目を集めているとレポートは伝えています。このアプリはNAVERが独自開発したAIモデルと膨大なデータを駆使して精度の高いレコメンデーションを実現し、ショート動画を活用したソーシャルコマースモデル、ポイントシステム、多様な配送サービスを統合することで、「ポータル✕AIレコメンド✕スマート配送」を一体化した革新的なショッピング体験を韓国の消費者に提供し、急速に支持を獲得していると報告されています。

『Naver Plus Store』は2025年3月のリリース初日に韓国のGoogle PlayとApp Storeのダウンロードランキングで首位を獲得したとのことです。3月から5月の間にはGoogle Playの総合ダウンロードランキングで合計約60日間にわたって首位を維持するという驚異的なパフォーマンスを示したと報告されています。リリースからわずか数ヶ月で累計ダウンロード数は100万を突破し、韓国市場における高い注目度とユーザーからの支持を証明していることが明らかになりました。

このアプリの成功の背景には、リリース初期段階でのモバイル広告戦略が重要な役割を果たしているとレポートは分析しています。視覚的に魅力的なバナー広告と期間限定のプロモーション情報を効果的に展開することで、ユーザーの注目を集め、ダウンロードへのコンバージョンを促進したようです。その結果、2025年3月から5月にかけて『Naver Plus Store』は『ChatGPT』を上回り、韓国市場でダウンロード数最多のモバイルアプリとなる快挙を達成したとされています。

Sensor Towerについて

Sensor Towerは2013年にサンフランシスコで設立されたモバイルアプリ・ゲーム分析企業です。P&G、Tencent、HBOなどのグローバル企業からも信頼を得ており、モバイル市場動向の把握に役立つApp Performance Insightsや広告戦略最適化のためのApp Advertising Insightsなど、高品質なデータ分析サービスを提供しているとのことです。

2025年にはPocket Gamer Mobile Games AwardsのBest Analytics/Data Tool賞を受賞するなど、業界からの高い評価を受けていることが報告されています。日本オフィスは2025年より東京・神田に移転し、日本市場でのビジネスを強化、パートナー企業も急増しているようです。

出典元:Sensor Tower プレスリリース

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