博報堂が「新富裕層調査2025」を実施、世帯年収3000万円以上が富裕層とウェルスリッチの境界に

株式会社博報堂(東京都港区、代表取締役社長:名倉健司)の「博報堂富裕層マーケティングラボ(HAML)」は、2024年5月に公開した「新富裕層"インカムリッチ"生活者調査」の発展版として、特に世帯年収3,000万円以上の高所得世帯の対象者を拡充した「新富裕層調査2025」を実施しました。

今回の調査では世帯年収1,500万円以上の所得富裕層(インカムリッチ)と、金融資産1億円以上の資産富裕層(ウェルスリッチ)の境界に着目し、世帯年収1,500万円以上、同3,000万円以上、同5,000万円以上の世帯の金融資産額や保有資産構成、生活意識、消費意識を中心に聴取・分析が行われました。また、世帯年収によるカテゴリー重視点やブランド選好、タッチポイント等の違いに着目し、不動産・住まい、金融・投資(投資ファンド・証券)、教育(子供の受験)、百貨店(外商利用者・プレミアム会員)、ファッション、時計・宝飾、化粧品(ポイントメイク・ファンデーション・スキンケア)、香水、シャンパン、ウイスキー、旅・リゾート(ホテル・旅館)、クレジットカード等のカテゴリー重視点やブランドイメージ、購入意向、タッチポイント等についても調査・分析が実施されています。

調査は2025年3月14日~25日にかけて、全国20~69歳の男女計3,512名を対象に実施されました。

調査結果のサマリー

  1. インカムリッチは世帯年収3,000万円以上を境にウェルスリッチ化する傾向が見られます。世帯年収3,000万円以上では金融資産1億円以上の富裕層世帯が5割を超え、同5,000万円以上では金融資産5億円以上の超富裕層世帯が5割を超えました。職業では「会社役員・経営者」の比率がおよそ2割に達しています。キャリア意識でも「自己成長志向」や「社会的地位志向」も高まる傾向が見られました。
  2. 世帯年収3,000万円以上では「株式」や「NISA」に加え、「アクティブファンド」や「REIT」などの投資信託や、「仮想通貨・暗号資産」等のオルタナティブ資産、「金」や「時計・宝飾」「アート」等の保有率が高く、同5,000万円以上で更に高まる傾向があります。所得および資産の拡大と比例して投資対象も「高リスク資産」「現物資産」へと拡大していく傾向が見られました。
  3. 前回調査でも見られたインカムリッチの特徴である「タイパ志向」や「健康・ウェルビーイング志向」は世帯年収に比例して高まる傾向が見られました。一方、「家事・育児の分担志向」は世帯年収が高いほど低いという結果になっています。また、世帯年収3,000万円以上を境に「家事・育児の外注志向」が急速に高まる傾向も見られました。
  4. 「子育て・教育ファースト志向」や「子供の海外留学志向」も世帯年収3,000万円以上を境に高まる傾向が見られました。
  5. インカムリッチは「アート・カルチャー志向」や「ストーリー消費志向」も強く、世帯年収3,000万円以上で特に際立つ結果となりました。

調査結果のポイント

インカムリッチは「世帯年収3,000万円以上」を境にウェルスリッチ化

  • 世帯年収3,000万円以上では、金融資産1億円以上が51.6%と5割を上回りました(=野村総合研究所の定義する「富裕層」世帯に相当)。
  • 世帯年収5,000万円以上では、金融資産1億円以上が68.6%に達し、金融資産5億円以上も50.7%と5割を上回りました(=同「超富裕層」世帯に相当)。
  • 職業が「会社経営者・役員」の比率は世帯年収1,500万円以上(8.8%)に対し、同3,000万円以上(18.0%)、同5,000万円以上(20.9%)と世帯年収3,000万円以上を境に増加する傾向が見られました。

「会社経営者・役員」比率はおよそ2割。「自己成長志向」や「社会的地位志向」が高まる傾向も

  • キャリア意識では「常に新しい知識や経験を追い求め、自分を成長させ続けたい」意識は世帯年収3,000万円以上(57.6%)で最も高く、同5,000万円以上(51.5%)ではやや低下しています。
  • 一方、「仕事を通じて、高い社会的地位やステータスを手に入れたい」意識は同3,000万円以上(48.3%)、5,000万円以上(47.0%)と世帯年収3000万円以上で共通して高い傾向が見られました。

世帯年収3,000万円以上で「リスク資産」や「現物資産」の保有が拡大

  • 「株式」や「NISA」の保有率はインカムリッチ全体を通じて高く世帯年収による差は小さい傾向です。
  • 世帯年収3,000万円以上では投資信託でも「アクティブファンド」(20.9%)や「REIT」(20.7%)、仮想通貨等の「暗号資産」(21.8%)といったオルタナティブ資産の保有が増加していることがわかりました。
  • 世帯年収5,000万円以上では、オルタナティブ資産でも「FX」(28.2%)、「社債」(22.9%)、「先物・オプション」(16.0%)、「プライベートエクイティ」(15.4%)の保有率や、「時計・宝飾等」(23.5%)、「金(等の貴金属)」(21.0%)「アート」(16.8%)等現物資産の保有率が更に拡大する傾向が見られました。

インカムリッチの特徴「タイパ志向」「健康・ウェルビーイング志向」は世帯年収に比例して高まる傾向

  • 「タイムパフォーマンス(タイパ)を重視した生活をしたい」は、世帯年収1,500万円以上(50.9%)に対し、同3,000万円以上(57.6%)、同5,000万円以上(61.3%)、「自身の健康や心の豊かさのためにお金をかけている」意識は世帯年収1,500万円以上(61.1%)に対し、同3,000万円以上(66.3%)、同5,000万円以上(69.9%)と世帯年収に比例して高まる傾向が見られました。

「家事・育児の分担志向」は世帯年収が高いほど低い。世帯年収3,000万円以上を境に「家事・育児の外注志向」が高まる傾向も

  • 一方、「夫婦・パートナーと協力して、家事や育児を分担すべきだ」という意識は世帯年収5,000万円以上(55.4%)で最も低く、世帯年収が高いほど低いという結果となりました。
  • また、「家事代行や育児サポートの外注サービスは積極的に利用するべきだ」意識は世帯年収1,500万円以上(35.7%)に対し、同3000万円以上(47.6%)、同5,000万円以上(51.8%)と世帯年収3,000万円を境に急速に高まる傾向が見られました。

「子育て・教育ファースト志向」や「子供の海外留学志向」は世帯年収3,000万円以上を境に高まる傾向

  • 「子供のためなら仕事や居住地、ライフスタイルを変えることもいとわない」意識は世帯年収1,500万円以上(44.5%)、同3000万円以上(54.7%)、同5,000万円以上(54.2%)、「子供には留学をさせたい」意識も同1,500万円以上(35.2%)、同3000万円以上(44.9%)、同5,000万円以上(41.7%)と世帯年収3000万円以上を境に急速に高まる傾向が見られました。

インカムリッチは「アート・カルチャー志向」や「ストーリー消費志向」も強く、世帯年収3,000万円以上でその傾向が特に際立つ

  • 「文化や芸術に触れることで自分自身の教養やセンスを高めていきたい」意識は、世帯年収1,500万円以上(48.2%)、同3,000万円以上(62.6%)、同5,000万円以上(67.0%)、「商品そのものだけでなく、その背景にあるストーリーが大切だと思う」意識は同1,500万円以上(40.8%)に対し、同3,000万円以上(54.3%)、同5,000万円以上(51.3%)とインカムリッチ全体で高い傾向ですが、世帯年収3,000万円以上で際立って高い結果となりました。

調査結果への所見

今回の調査を通じて「世帯年収3,000万円」が所得富裕層(インカムリッチ)と資産富裕層(ウェルスリッチ)の両面を併せ持つ「超インカムリッチ」の分岐点であることが見えてきました。世帯年収5,000万円以上では金融資産5億円以上の「超富裕層」が実に5割を占める結果となっています。

経済的余力は、ファミリー層であれば、家事や育児といったタスクの外部化や、より良い子育て・教育環境への投資につながっているようです。また「文化」や「芸術」など、自分自身の感性や教養を高めることへの関心の高まりは、彼らの物性的・機能的な価値にとどまらない「ストーリー」を重視した消費とも密接に関わっていることがわかります。

博報堂富裕層マーケティングラボによると、「超インカムリッチ」のような、経済的にも文化的にも成熟した新しい富裕層の共感を獲得するためには、物性的・機能的価値に加えて、「ストーリー」のエビデンスにもなるような、「モノづくり」全体に宿る文化的・芸術的な独自の価値、つまり「文化的意味性」が重要になってくるとのことです。

調査の背景

(出典)
・野村総合研究所のデータをもとに博報堂が作成
・世帯年収別の世帯数:厚生労働省「国民生活基礎調査」(2024)

調査概要

調査名称:「新富裕層調査2025」

調査手法:インターネット調査

対象者:20~69歳の男女計3,512名

今回の調査では「インカムリッチ」と「ウェルスリッチ」の境となる世帯年収等、インカムリッチの中でも「世帯年収」による特徴の分析を強化することを目的に高年収世帯の対象者を拡充しています。全体で3,521サンプルのうち、世帯年収1,500万円以上のインカムリッチ層を2,009サンプル、同3,000万円以上を609サンプル、同5,000万円以上を209サンプルを確保し、実際の人口構成に基づきウェイトバック集計を実施しました。

対象地域:全国

調査時期:2025年3月14日~25日

調査機関:QO株式会社

博報堂富裕層マーケティングラボについて

博報堂富裕層マーケティングラボ(英文名:The Hakuhodo Affluent Marketing Lab , 略称:HAML)は、変化する富裕層マーケットのトレンドを捉え、クライアント企業の富裕層向けマーケティング活動や事業、商品・サービス開発を支援する、富裕層マーケティングとラグジュアリー・高価格帯ブランドマーケティングを対象とした専門チームです。また、博報堂独自のAIソリューションである「バーチャル生活者」と、本調査結果をはじめとするこれまでの富裕層マーケティングナレッジを融合させた「バーチャル富裕層」生活者ソリューションを開発し、通常の調査では深堀りしづらい富裕層生活者の「本音」を起点とした商品・サービス開発、カスタマージャーニー設計、コミュニケーション開発の支援にも取り組んでいます。

出典元:株式会社博報堂  プレスリリース

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