サステナブルファッション調査:消費者の約半数が環境影響を意識するも、購入決め手は「素材・着心地」―Tavitalium調査

サステナブルファッション市場が拡大する中、消費者の「素材への関心」や「価格許容度」がどのように変化しているのかを明らかにするため、Tシャツやパーカーなどに堆肥分解性ポリエステルを用いたアパレルブランドTavitaliumは、ファッションへの関心が高い20〜49歳の男女を対象に意識調査を実施しました。

環境問題への関心が高まる現在、ファッション業界においても「サステナブル」は重要なキーワードとなっています。特に、"服が土に還る"という新しい素材が注目を集める中、「価格が高くてもエコなものを選びたい」と考える消費者が増加している傾向にあります。

このような背景から、Tavitaliumが実施した最新調査では、素材へのこだわりが購買意欲やブランド選定に与える影響について明らかになりました。

調査サマリー

・無地でシンプルなデザインのTシャツ・パーカーを購入する際に重視することは「価格」「生地の色」「着心地」

・「生分解性素材」について理解している方は約3割にとどまる結果に

・約半数が、服を購入する際に素材が環境に与える影響を意識していると回答

・「環境への配慮」をうたった服を購入したことがある方は約3割。購入の決め手は「素材・肌触り」や「着心地」が上位に

・二次元コードで伝えるブランド価値について約3割が「遊び心があって面白い」と回答

調査概要:「環境配慮素材に対する消費者の意識と高価格帯アパレルの購入意欲」に関する調査

【調査期間】2025年7月15日(火)~2025年7月16日(水)

【調査方法】PRIZMAによるインターネット調査

【調査人数】1,011人

【調査対象】調査回答時に全国の20〜49歳の男女と回答したモニター

【調査元】株式会社V&A Japan

【モニター提供元】PRIZMAリサーチ

「シンプルなアパレル」に対しての価値観とは?

はじめに、「あなたは普段、無地でシンプルなデザインのTシャツ・パーカーをどのようなシチュエーションで着用することが多いか」という質問に対して、『日常の外出時(68.2%)』と回答した方が最も多く、『旅行・レジャー(46.9%)』『家でのリラックスタイム(43.2%)』と続きました。

着用シーンにおいて最も多かったのは『日常の外出時』、次いでプライベートな場面での活用が多い結果となっています。

『仕事中』にも着用する方が一定数いることから、シンプルな服は幅広い生活シーンに対応する利便性があることがわかります。

また、選択肢に『家でのリラックスタイム』や『運動時』も含まれていることから、機能性や快適性が服の選定に影響を与えている可能性も考えられます。

前の質問で『特に着用しない』と回答した方以外に、購入時に重視されるポイントについても調査されました。

「無地でシンプルなデザインのTシャツ・パーカーを購入する際に重視する点」について尋ねたところ、『価格(54.4%)』が最多で、『生地の色(46.4%)』『着心地(41.6%)』と続きました。

『価格』が最も重視される一方で、『生地の色』や『着心地』といった感覚的要素も重視されています。

外見や使用感が優先される傾向が見られますが、これはシンプルな服がファッション性よりも「使いやすさ」で選ばれていることを示しています。

では、ブランドの背景は価格受容性にどう影響するのでしょうか。

「ブランドの世界観やストーリー性がある『シンプルな服』が、通常より3,000〜5,000円高かった場合でも、あなたは購入を検討するか」という質問に対して、以下のような回答結果となりました。

『非常に検討する(18.7%)』

『やや検討する(37.0%)』

『どちらでもない(14.5%)』

『あまり検討しない(18.9%)』

『まったく検討しない(10.9%)』

価格が上がっても購入を検討する方は約6割に達した一方で、否定的な意見も3割以上寄せられ、評価が分かれる結果となっています。

ブランドの世界観やストーリーに共感しても、価格とのバランスが取れていなければ選ばれにくい実態がうかがえます。

特に、『どちらでもない』という回答は、世界観だけでは購買動機に至らないことを示していると考えられます。

環境に配慮した素材「生分解性素材」の認知は約7割、でも「高くても買う」は少数派

環境配慮素材の中でも注目されているものとして、「生分解性素材」があります。

生分解性素材とは、使用後に堆肥などの特定環境下で微生物の働きにより分解される素材ですが、この素材を知っている方はどの程度いるのでしょうか。

「あなたは『生分解性素材(自然に還る素材)』について知っているか」という質問に対して、以下のような回答結果となりました。

『知っている(内容も理解している)(27.9%)』

『聞いたことはあるが詳しくは知らない(41.6%)』

『まったく知らない(30.5%)』

一般的な関心はあるものの、具体的な知識にはまだ乏しいことが明らかになっています。

素材名だけが先行して知られているケースも多く、意味や特性が正しく理解されていないまま「エコっぽいもの」として受け止められている可能性も考えられます。

では、服を購入する際、素材が環境に与える影響をどれほど意識しているのでしょうか。

「服を購入する際、素材が環境に与える影響を意識することはあるか」という質問に対して、約半数が『いつも意識している(17.2%)』『ときどき意識している(32.2%)』と回答しました。

「いつも」「ときどき」と意識している方は約半数に上るものの、「意識していない」という回答も多く、環境への配慮が習慣として根付いているとは言い難い状況です。

環境配慮素材への価格上乗せを受け入れる姿勢についても確認されました。

「『環境にやさしい素材なら、多少価格が高くても購入する』という考えに、あなたはどの程度あてはまるか」という質問に対して、以下のような回答結果となりました。

『非常にあてはまる(14.4%)』

『ややあてはまる(31.1%)』

『どちらでもない(22.9%)』

『あまりあてはまらない(18.5%)』

『まったくあてはまらない(13.1%)』

「あてはまる」「どちらでもない」といった回答が多く、価格上昇への許容には慎重な姿勢がうかがえます。

約半数が肯定的ながら、その多くは「やや」止まりで、積極的な行動にはつながりにくい印象です。

消費者にとって環境へ配慮は「加点要素」にはなっても、「購入決定の主因」にはなっていないという実態が見えてきます。

実際に、環境にやさしい素材でつくられたTシャツを購入する際、どのくらいの価格までなら「高くても購入する」と感じるのでしょうか。

「環境にやさしい素材でつくられたTシャツを購入する際、あなたが『高くても検討する』と感じる上限価格帯」について尋ねたところ、以下のような回答結果となりました。

『~3,000円(32.8%)』

『~5,000円(37.3%)』

『~7,000円(20.0%)』

『~10,000円(6.7%)』

『10,000円以上(3.2%)』

約7割が「~5,000円まで」と回答したことから、『~5,000円』がひとつの心理的な上限として機能していることがわかります。

価格が上がるにつれて選択率は大きく下がり、『10,000円以上』になるとごく一部に限られました。

これは消費者がいくらエコな価値に共感しても、「服」という商品の価格帯に対する一般的な許容ラインが存在していることを示しています。

機能や見た目が従来品と変わらない場合、価格上昇の合理性を納得してもらう難しさが浮き彫りになっています。

環境への配慮をうたった服の購入経験は約3割が「ある」と回答。決め手になったポイントとは

では、これまでに『環境への配慮』をうたった服を購入したことがある方はどの程度いるのでしょうか。

「これまでに『環境への配慮』をうたった衣服を購入したことがあるか」という質問に対して、約3割が『購入したことがある(33.4%)』と回答しました。

購入経験のある方とない方が拮抗し、『覚えていない』という方も約3割いることがわかりましたが、環境に配慮した服を購入する決め手になったこととは何なのでしょうか。

前の質問で『購入したことがある』と回答した方に、「環境に配慮した服を購入する決め手になったポイント」について尋ねたところ、『素材・肌触り(40.7%)』『着心地(40.4%)』『生地の色(38.6%)』『価格(38.6%)』が上位を占め、『環境に配慮されているか(14.8%)』は下位にとどまりました。

エコであること自体が購入理由となることは少なく、実際には「着て気持ちいい」「好みに合う」「価格が妥当」といった身体的・感覚的価値が優先されていることがわかります。

購入に至るには、基本的な快適さや使いやすさが前提であり、環境性はその後押し要素にとどまっているといえるでしょう。

最後に、ブランドのストーリー性を視覚的に伝える方法について聞きました。

「衣服にブランドのストーリーが見れる公式サイトへつながる二次元コードがさりげなくデザインされていた場合、あなたは主にどう感じるか」という質問に対して、『遊び心があって面白いと思う(32.6%)』が最多で、『少し違和感がある(18.1%)』『おしゃれだと思う(17.8%)』と続きました。

約3割が「遊び心があって面白い」と回答し、全体的に肯定的な反応が見られました。

一方で、「違和感がある」「好ましくない」といった意見も一定数あり、デザインへの受容は人によって大きくわかれています。

情報提供の手段として効果的に活用するには、「さりげなさ」と「機能美」の両立が鍵になりそうです。

まとめ:環境へ配慮した服は「共感されても選ばれない」?実用性重視の消費行動が浮き彫りに

今回の調査で、環境にやさしい素材やブランドの世界観が注目されつつも、それが直接的な購入の動機になるにはまだ壁があることが明らかになりました。

多くの方が、無地でシンプルなTシャツやパーカーに対して「価格」や「生地の色」「着心地」などの感覚的な要素を重視しており、「環境配慮」や「ブランドのストーリー性」は副次的な要素として認識されています。

環境に配慮された素材やブランドの世界観を持つ製品に対して「検討する」と回答した方は約6割いましたが、実際の購入行動に結びつくにはさらなる価値訴求が求められます。

加えて、生分解性素材(自然に還る素材)についての理解度や環境意識は限定的であり、認知や理解の不足が「価格上乗せへの納得感」を妨げる要因となっている可能性もあります。

また、環境への配慮をうたった服を購入したことがある方の中でも「環境性」そのものを購入理由に挙げた割合は低く、購入を後押ししていたのは「素材」や「着心地」「生地の色」「価格」などの一般的な価値でした。

一方で、ブランドサイトへつながる二次元コードなどを服に取り入れる試みに対しては、ポジティブに受け止める声も多く見られました。

これは、情報提供のスタイルが共感性や遊び心を帯びた場合に、受容されやすくなることを示しています。

全体として、サステナブル素材を訴求する上では、「環境に配慮している」というだけでは不十分で、「着てみたい」「選びたくなる」といった理由を商品本体で示すことが不可欠だといえます。

出典元: 株式会社V&A Japan プレスリリース

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