博報堂DYアウトドアと大阪メトロアドエラ、AIを活用した地下鉄広告の「注目度」測定実験を実施 - OOH広告の新価値創造へ

広告が「本当に見られているか?」という問いが、現在グローバルなマーケティング課題となっています。テレビやデジタル広告の分野では、広告への"注目"を定量的に捉える「アテンション指標(Attention Metrics)」が、新たな広告価値の指標として注目されており、その流れはOOH(交通広告/屋外広告)領域にも広がりつつあります。

このたび、広告会社の株式会社博報堂DYアウトドアと交通広告媒体社の株式会社大阪メトロアドエラが連携し、地下鉄車内のデジタルサイネージおよびアナログ広告を対象に、AIによるアテンション測定の実証実験を実施しました。

本実験では視線学習と画像認識学習を組み合わせた「サリエンシーモデル」が活用され、広告の視覚的注目度を30秒単位で解析されました。これにより従来のインプレッション数や視認率では測れなかった「どれだけ注目されたか」を数値で明示することに成功したとのことです。この取り組みは、OOH広告が「表示されるもの」から「注目されるメディア」へと進化する中、広告の価値を科学的に証明する先進的な試みとなっています。

AIによるアテンション測定の実証実験

調査概要:AIが"注目度"を予測・数値化

本実験では、視線学習と画像認識学習を融合した「サリエンシーモデル」が活用され、広告の視覚的注目度を30秒単位で詳細に解析されました。具体的には、以下2つのアテンション指標を測定することで、広告効果の新たな評価軸が確立されています。

・アテンション率(Attention Rate):広告がどれだけ人の注意を引きつけたかを表す指標
※一瞬でも見た割合を算出する視認率(Visibility rate)とは異なる概念です

・アテンションタイム(Attention Time):広告に注目していた30秒ごとの時間

これらの指標により、単に「広告が見える位置にあったか」ではなく、「どれだけ注目を集めたか」という質的な評価が可能になります。従来の広告評価では捉えきれなかった「注目の質」を定量化することで、より効果的な広告戦略の立案が期待できるとしています。

サリエンシーモデルの特徴

今回の実験で活用された「サリエンシーモデル」には、以下のような特徴があります。

・色彩や明暗、形状など、人が本能的に注目する要素を数理的に再現するAIモデル
・実際のアイ・トラッキング調査との高い相関性が確認されており、大規模な眼球運動測定を行わずともコストを抑えて予測が可能
・ロケーションごとの特徴やクリエイティブ要素の違いによるアテンションの傾向も可視化することができる

このモデルを活用することで、人間の視覚的注意の仕組みをAIが学習し、広告素材やその設置環境に対して、どのような要素が注目を集めるかを予測することが可能になります。従来であれば、被験者を集めて実際に視線追跡装置を使用する必要があったところ、AIによる予測モデルを用いることで、より効率的かつ大規模なデータ収集・分析が実現したとのことです。

主な成果と展望:OOH広告の「見られた質」を可視化

本実証実験によって得られた主な成果と今後の展望は以下の通りです。

・従来のインプレッション数や視認率では測れなかった「どれだけ注目されたか」を具体的な数値で明示することに成功
・媒体ごとの注目特性や、クリエイティブ要素(色・構図・動き)による効果の違いも明らかになった
・今後はAIによる事前のアテンション予測サービスの展開も視野に入れている

この成果により、広告主はより効果的な広告出稿の意思決定が可能になるとともに、媒体社にとっても自社媒体の価値をより科学的に説明する材料となります。特に、交通広告や屋外広告といったOOH領域では、これまで「通行量」や「設置場所」といった物理的指標が主流でしたが、今回の取り組みにより「注目の質」という新たな価値軸での評価が可能になりました。

関係者のコメント

株式会社博報堂DYアウトドア 取締役執行役員 デジタルプロデュース部 部長 三浦 暁
「生活者の生活導線上に必ず存在するアウトドアメディアは、タッチポイントとしても今後重要性を増していくと考えています。なかでも今回のようなアテンションに関する調査は、アウトドアメディアのメディア価値や質的価値をより深く理解する上でも、今後も継続して取り組むべきアプローチであると思います。」

株式会社大阪メトロアドエラ 東京オフィス デジタルマネージャー 荒井孝文
「これまでOOH広告の評価は設置場所や通行量に依存しがちでしたが、今回の調査により"どれだけ注目されたか"を定量的に捉える新たな手法が見えてきました。駅や車内といった日常空間で接触するOOHだからこそ、"アテンション"という指標の導入は非常に意義深いと感じています。」

OOH業界にとっての意義

OOH広告は今、「表示されるもの」から「注目されるメディア」へと変革の時期を迎えています。今回の実証実験は、広告会社と媒体社が連携してOOHの価値を"科学的に"証明しようとする先進的な取り組みであると言えます。

また、国際的な文脈で見ると、米国ARF(Advertising Research Foundation)やMRC(Media Rating Council)などによるアテンション測定の標準化が進む中、今回のような日本発の実証実験は、グローバルな広告業界における注目も集める可能性を秘めています。OOH広告のデジタル化やプログラマティック化が進む現在、「アテンション」という共通言語を持つことは、国際的な広告取引の標準化にも寄与すると考えられます。

さらに、消費者の情報接触行動が多様化する中で、公共空間に存在するOOH広告は「避けられない広告媒体」として再評価されています。そのような背景からも、OOH広告がどれだけ効果的に注目を集められるかを科学的に測定・予測する技術は、今後ますます重要性を増していくでしょう。

今後の展望

両社は今後、本実験の成果をもとに、OOHメディアにおけるアテンション測定の高度化を進めていく方針です。具体的には、より多様な広告フォーマットや設置環境に対応したアテンション測定モデルの開発や、AIを活用したアテンション予測・クリエイティブ最適化サービスの事業化も視野に入れた取り組みを展開していく予定とのことです。

また、アテンション指標を活用した新たな広告取引モデルの構築や、複数の広告媒体間でのアテンション比較など、OOH広告のバリュー向上に向けた様々な可能性を模索していくことも考えられます。デジタル技術とAIの発展により、これまでブラックボックスとされてきた広告効果の「質」を可視化する取り組みは、広告業界全体の進化にも貢献するものとなるでしょう。

出典元:株式会社博報堂DYアウトドア プレスリリース

コマースピックLINE公式アカウント

コマースピックメルマガ