
株式会社博報堂DYホールディングス(東京都港区、代表取締役社長:西山 泰央)と株式会社博報堂テクノロジーズ(東京都港区、代表取締役社長:中村 信)は、独自に保有する豊富な生活者データをAIで分析・再現した"エビデンスベースド"な「バーチャル生活者」を開発し、博報堂DYグループの全社員向けに提供を開始したことを発表しました。このシステムでは、生成されたバーチャル生活者といつでも対話することが可能となっています。
この「バーチャル生活者」は統合マーケティングプラットフォーム「CREATIVITY ENGINE BLOOM(クリエイティビティ エンジン ブルーム)」(以下 BLOOM)の中核機能として位置づけられており、今後BLOOMの様々なプロダクトと連携していく予定とのことです。これにより、グループ社員の創造性を拡張し、新たなサービスやビジネス創造の支援、マーケティング・コミュニケーション業務のさらなる高度化と効率化を目指していくことが発表されています。
この記事の目次
開発の背景
AI技術の活用がますます進展する現代において、博報堂DYグループは「Human-Centered AI」という理念を掲げています。これは人間中心のAI活用とAIによる人間の創造性拡張を目指すもので、グループ社員の根幹にある生活者発想をAIによってより深めるための「生活者発想プラットフォーム」の開発を進めてきたとのことです。
この生活者発想プラットフォームにとって最も重要な要素となるのが、同社が長年にわたって蓄積してきた独自の生活者データです。このデータをAIで処理して生成したバーチャル生活者との対話を通じて、社員がより深く多様な洞察を得ることが可能になります。
プロダクト概要
「バーチャル生活者」は2024年3月にプロトタイプが発表されて以来、様々な改良や実証実験を重ねながら、より「実態に近い生活者」の生成や、より質の高い発想支援を実現するための開発が続けられてきました。
今回開発された"エビデンスベースド"「バーチャル生活者」の特徴は、単なる性別や年齢といった基本属性だけでなく、趣味・嗜好などの意識データ、さらには利用ウェブサイトなどの実際の行動データまでを含む、博報堂DYグループ独自の20万件規模の大規模調査パネル「Queridaパネル」のデータを活用して作成できる点にあります。
Queridaパネルとは、博報堂が年に一度20万IDを対象に実施する大規模調査から得られるデータベースです。デモグラフィック情報のほか、生活全般に関する質問、メディア接触や商品購買についての情報が収集されています。また、インターネット上の行動データとも連携しており、閲覧行動から利用者の興味関心についても把握することができます。
このような豊富なデータに基づくことで、より市場の実態に近いリアルな生活者像を再現することが可能となり、取り組むビジネスやマーケティング課題に合わせた適切なバーチャル生活者を選択できます。利用者は自らのアイデアや疑問をもとに、バーチャル生活者との質の高い対話を通じて、新たな問いやヒントを得ることができます。
この「バーチャル生活者」システムは、博報堂DYグループの全社員が社内システムを通じていつでも利用できるようになっており、コンセプト開発やクリエイティブ制作、メディアプランニングなど、あらゆる提案プロセスで活用することが可能です。
主な機能
バーチャル生活者と常時対話できる共創型のUI
データに基づいたターゲット分析から得られたペルソナ情報をそのまま入力するだけで、AIによってわずか数クリックでバーチャル生活者を生成できる仕組みとなっています。専門的なプロンプト文の作成は不要で、短時間のうちに複数の生活者像を生成することが可能です。
生成されたバーチャル生活者は、一度に複数設定して、チャット形式のUIで同時に会話することができます。これにより、一つの問いに対して単なる賛成や反対にとどまらない、様々な視点からの意見を得ることができ、社員の創造的思考を刺激する効果が期待されます。
また、画像や動画をシステム上で提示してバーチャル生活者に意見を求めることも可能です。これによりコミュニケーション施策に対するより具体的な評価を事前に得ることができ、これまで以上にターゲットを正確に捉えた提案が実現できるようになります。
博報堂DYグループの生活者発想法の組み込み
バーチャル生活者との対話プロセスには、博報堂DYグループが長年培ってきた生活者の深層心理やインサイトを洞察するための独自の生活者発想法が組み込まれています。この対話を通して生活者の心を動かす価値や思考プロセスに気づくことができ、マーケティング・コミュニケーション戦略立案や商品コンセプト開発、コミュニケーション施策開発の支援に大きく貢献します。

CREATIVITY ENGINE BLOOMとは
2024年6月4日、博報堂DYホールディングスは統合マーケティングプラットフォーム「CREATIVITY ENGINE BLOOM」の開発を発表しました。このプラットフォームは、メディアビジネスやデジタルマーケティングなどのマーケティング領域だけでなく、クリエイティブ制作、販促・CRMなどのコマース、流通領域までをワンストップで統合・管理できる統合マーケティングプラットフォームです。
博報堂DYグループが保有する生活者DATA PLATFORMをベースにAI技術を活用することで、利用者のクリエイティビティを拡張し、新しいコミュニケーションサービスやビジネス創造を支援します。まずは同グループ社員での利用からスタートし、スピーディに高度な統合マーケティングサービスの効率化と高度化を実現することで、マーケティングビジネスのOM率向上、売上総利益率の成長に貢献することを目指しています。
「CREATIVITY ENGINE BLOOM」は以下のモジュールで構成されています。
STRATEGY BLOOM:マーケティング戦略の策定を支援するモジュールです。生活者データとクライアント企業のデータを統合し、AI技術を用いて市場構造の可視化やターゲット設定、KPI策定の業務効率化を実現します。
MEDIA BLOOM:AaaSと連携し、KPI達成のためのメディア効果を最大化するモジュールです。テレビとデジタルを組み合わせたメディア最適化やアロケーションを効率的に策定することができます。
CREATIVE BLOOM:クリエイティブ制作を支援するモジュールです。AIを活用してクリエイティブの評価や自動生成を行い、業務の効率化と高度化を実現します。
COMMERCE BLOOM:購買データとECプラットフォームを連携し、リアル店舗とECを統合したマーケティング戦略立案を支援するモジュールです。
ENGAGEMENT BLOOM:顧客との良質な関係性を構築するためのモジュールです。大手SFAやMAツールと生活者DATA PLATFORMを連携し、顧客のLTV向上やOne to Oneマーケティングサービスを提供します。
「生活者 DATA PLATFORM」:博報堂DYグループの独自データと外部データを一元管理し、BLOOMの各プロダクトで利用可能な基盤として整備されています。
CREATIVITY ENGINE BLOOMの強み
マーケティング業務の統合・デファクトスタンダード化
STRATEGY、MEDIA、CREATIVE各業務を一元管理し、業務プロセスを統合・標準化することにより、労働生産性の向上を実現します。
生成AI機能を用いた業務の効率化と高度化
生活者発想で培ったマーケティング業務のノウハウを生成AIに組み込み、生活者のより深い洞察を支援します。これにより、ターゲットプロファイルやコンセプト、クリエイティブアイデアなどのクリエイティブワーク業務において、生成AIと人間が協調するサービスを提供し、社員の創造性を高めることが可能となります。
統合マーケティング効果の可視化
生活者DATAPLATFORMデータを活用し、統計技術やAI技術(Human-Centered AI機能)を駆使して、統合マーケティング効果を測定可能な独自指標を提供します。また、その指標を向上させるための戦略策定や施策開発を支援するマーケティングインテリジェンス機能も提供し、クライアント企業の事業成長に貢献していきます。

今後の展望
「バーチャル生活者」はCREATIVITY ENGINE BLOOMの根幹機能として、今後BLOOMの各プロダクトとの連携をさらに深めていく予定とのことです。これにより、これまで以上に生活者の心理を的確に捉えたマーケティングやプランニングの実現に貢献することが期待されています。
また、博報堂DYグループが保有する生活者DATAPLATFORMで準備されている様々なデータから作成されたプロファイル結果も、順次連携・搭載されていく予定だそうです。
BLOOMには今後もAIを活用した機能の拡充が計画されており、博報堂DYグループの横断的なAI推進プロジェクト(HCAI Initiative)の一環として、同社のAIスペシャリストや各領域のプロフェッショナルチームが開発に携わっています。これにより、同グループのマーケティング基盤をAIとともに生活者の心を動かすアイデアを創出する場へと拡張し、テクノロジーによって生活者の暮らしや、得意先・媒体社のビジネスをさらに支援していくとしています。
出典元:株式会社博報堂DYホールディングス プレスリリース













