株式会社電通は8月26日、小売り企業やECサイトなどが保有する購買ログデータに、購買者の人物像情報を付与することで、購買場所ごとに購買者像を可視化する「People PALETTE(ピープルパレット)」の提供を開始したことを発表しました。このサービスにより、ブランドや商品について、チャネルを横断した購買者特性の分析が可能になり、店頭での陳列や商談、商品開発などへの活用が期待されています。

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マーケティングDXにおける購買者像把握の課題を解決
近年、多くの企業がデジタル技術を活用したマーケティングDXを推進し、ブランドや商品の購買ログデータを保有してデータ活用の高度化に取り組んでいます。しかし、購買ログデータだけでは、購買者の行動履歴や実績を示すことはできても、属性や特性などの購買者像を詳細に把握することが難しいという課題があったようです。
例えば、同じ商品を購入する生活者であっても、コンビニエンスストアやスーパーマーケット、オンラインストアなど、購買場所によって購買者の特性が全く異なる可能性があります。この課題に対応するために、別途生活者の意識調査を行い、意識調査データと購買データを統合して購買者像を分析する手法もありますが、費用やリソース、スピードの面で実施ハードルが高いのが実情でした。
生成AIを活用した「Personality CHIPS」の抽出
「People PALETTE」は、生成AIを活用して、電通独自の大規模調査データからブランド・商品の購買者の属性や特性を示す108個のプロファイリング要素「Personality CHIPS」を抽出します。「インフルエンサータイプ」「テレビLover」「社会貢献したい」「情報収集家」などの属性や特性を示す「Personality CHIPS」を、さまざまなブランド・商品にひもづけてデータベース化したとのことです。
このデータベースを、小売り企業やECサイトなどが持つ生活者の許諾を得た購買ログデータと、生成AIを用いて統合します。これにより、特定ブランド・商品の購買実績情報と、そのブランド・商品を購入している人がその購買場所で他にどのようなブランド・商品を購入しているかという情報を加味して、特定ブランド・商品の購買者像を分析できるようになったとしています(特許出願中)。
購買ログデータを持つ小売り企業やECサイトを運営する企業は、購買ログデータ上で購買者像を把握し、マーケティングに活用しやすい形で取引先企業に対して情報提供することが可能になります。

多様なマーケティング活動への活用が可能
「People PALETTE」の活用方法は多岐にわたります。ブランド・商品の「People PALETTE」とテレビなどの視聴ログデータを統合することで、購買者と相性のいいメディアやコンテンツの分析も可能になるとのことです。これにより、購買者と親和性の高いメディアへの広告出稿を効果的に行うことができます。
また、購買者の特性に合わせた店舗での陳列や販促活動、商品開発にも展開可能なツールであることから、企業は売り上げの向上やよりよい顧客体験の創造に活用することができます。これらの機能により、企業のマーケティング活動をより効果的に進めることが期待されています。
株式会社電通は今後も、新しい技術やさまざまなデータを活用し、マーケティング活動を進化させるソリューションとして開発・提供することで、クライアントの事業成長に貢献していく方針です。

なお、「People PALETTE」で活用される大規模調査データは、株式会社電通が約15万人(約30業種)に対して年2回実施している、価値観・メディア接触などの意識調査データとなっています。
「People PALETTE」のサービス詳細
「People PALETTE」のサービス内容をより詳しく見ていきましょう。このサービスの特徴は大きく分けて以下の3つです。
- 購買者像の可視化
購買ログデータと「Personality CHIPS」の統合により、チャネルごとの購買者像を可視化します。これにより、どのような人がどこでどんな商品を買っているかを詳細に把握することができます。 - 生成AIを活用したデータ統合
生成AI技術を用いることで、大規模調査データから抽出した購買者特性と購買ログデータを効率的に統合し、リアルタイムな分析を可能にします。 - マーケティング施策への展開
分析結果を広告出稿、店舗陳列、商品開発など、様々なマーケティング施策に活用することができます。
サービス導入のメリット
「People PALETTE」を導入することで、企業には以下のようなメリットがあるとされています。
まず、小売り企業やECサイト運営企業にとっては、自社が保有する購買ログデータの価値を高め、取引先企業に対してより有益な情報提供が可能になります。これにより、データを活用した新たなビジネスモデルの構築も期待できます。
また、メーカーや広告主企業にとっては、自社商品やブランドの購買者像をチャネル別に詳細に把握できるようになります。これにより、ターゲットに合わせた効果的なマーケティング戦略の立案が可能になり、広告効果の最大化や顧客体験の向上につながります。
さらに、メディア企業にとっては、視聴者データと購買者データを統合することで、広告主に対してより説得力のある広告提案が可能になります。特定商品の購買者と親和性の高いコンテンツやタイムテーブルの提案など、データに基づいた営業活動を展開できます。
今後の展望
株式会社電通は、「People PALETTE」の機能拡充を継続的に行っていく予定だと発表しています。今後は、より多様なデータソースとの連携や、AIによる分析精度の向上、レコメンデーション機能の追加など、さらなる進化が期待されています。
また、企業のマーケティング活動全体を支援するソリューションとして、コンサルティングサービスとの連携も強化していく方針とのことです。これにより、データ分析から具体的な施策実行までをトータルでサポートし、クライアント企業のビジネス成長に貢献していくことを目指しているようです。
マーケティングDXが加速する中、「People PALETTE」のような高度なデータ活用ツールの需要は今後さらに高まることが予想されます。電通は引き続き、最新技術とデータを活用したイノベーティブなソリューション開発に取り組んでいくとしています。
出典元:株式会社電通 プレスリリース