Sensor Tower調査:APAC地域の食品・飲料ブランドのグローバルデジタル広告戦略の最新動向

APAC地域の食品・飲料ブランドがグローバル市場への展開を加速させる中、デジタル広告がブランド認知度向上と消費者獲得の重要なツールとなっています。Sensor Towerが発表した最新レポートによると、地域特性に合わせたローカライズ戦略、複数広告プラットフォームの組み合わせ、文化的要素との連携が、APAC企業の国際展開成功の鍵となっていることが明らかになりました。

この調査レポートは、Sensor TowerのPathmaticsによる広告モニタリングデータを基に、APAC地域の食品・飲料ブランドの海外マーケティング戦略の新たな傾向を分析したものです。サントリーやCJ FOODSなど、APAC地域を代表する大手企業による地域別にカスタマイズされたデジタル広告戦略のケーススタディも掲載されており、市場動向を詳細に把握することができます。

北米市場:APAC食品・飲料ブランドの主要広告投資先

同調査によりますと、2024年6月から2025年5月までの期間、アメリカにおける食品・飲料関連のデジタル広告費は66億ドルに達し、インプレッション数は約7,200億回に迫る規模となっているそうです。世界最大の消費市場であるアメリカは、APAC地域のブランドにとって海外広告展開の最重要拠点となっています。サントリーやCJ FOODSといった企業も、アメリカ市場向けの広告予算を増額し、ブランド認知度と市場シェア拡大に注力していることが報告されています。

北米市場のデジタル広告データ

特にサントリーにとって、アメリカ市場は高い消費力に加え、スピリッツ需要の大きさと高利益率から、海外事業成長の重要な原動力となっていると分析されています。2025年1月から5月にかけてのアメリカでのサントリーのデジタル広告インプレッション数は、前年同期比で244%増加し、30億回に達したとのことです。これは初めて日本国内のインプレッション数を上回る結果となり、サントリーのアメリカ市場重視戦略が明確に表れています。

サントリーのアメリカ市場広告データ

ローカライズ戦略:海外広告展開成功の鍵

レポートでは、海外市場での成功には地域ごとの消費者嗜好や文化に合わせたローカライズ戦略が不可欠だと指摘されています。サントリーの事例では、各地域の飲用文化や消費者特性を深く理解し、市場ごとに最適化された広告展開を行っていることが紹介されています。

アメリカ市場では、サントリーは傘下の高級スピリッツブランドであるMaker's Mark、Jim Beam、Hornitosなどに焦点を当てたデジタル広告を展開し、利益率の高いスピリッツ市場での存在感を強化しているそうです。一方、イギリスでは主に機能性飲料のLucozadeとアルコール飲料の-196に広告投資を集中させ、スポーツ愛好家やパーティー志向の若年層に的確にアプローチしています。

オーストラリアでは、V Energy DrinkとBOSSが広告の中心ブランドとなっており、アウトドアやエクストリームスポーツを楽しむ消費者層をターゲットにしているとのことです。このように、サントリーは各地域のライフスタイルや消費者嗜好を深く分析し、それに適合した製品とメッセージで効果的な広告展開を実現していると報告されています。

サントリーのローカライズ戦略

プラットフォーム選択とターゲティングの精緻化

Sensor Towerのレポートによれば、効果的なデジタル広告戦略の重要な要素として、プラットフォームの選択とターゲット層の精密な分析が挙げられています。韓国の食品大手CJ FOODSは、グローバル展開においてInstagramを主要プラットフォームとして活用し、18歳から35歳のグルメ志向の若年層にリーチしていることが明らかになっています。

特に注目すべきは、アメリカ市場でのCJ FOODSの戦略です。同社の広告の半数以上がHuluやDisney+などのOTT(Over The Top)プラットフォームに配信され、「家族と一緒に食事を楽しむ」というシーンに合致したコンテンツ展開によって、ブランドとの深い感情的つながりの構築に成功しているとレポートは分析しています。

この戦略的なプラットフォーム選択とコンテンツのマッチングにより、アメリカにおけるCJ FOODSの広告視聴者の45%が18歳から24歳の若年層となっており、次世代の消費者を効果的に獲得していることが示されています。

CJ FOODSのプラットフォーム戦略

ポップカルチャーとの融合によるブランド力強化

レポートでは、APAC食品・飲料ブランドのグローバル展開において、現地のポップカルチャーや流行要素との連携が重要な差別化要因となっていることが指摘されています。CJ FOODSはこの戦略を巧みに実行し、韓国ドラマ『イカゲーム』やK-POPグループのイベント、人気映画IPなどの文化的資源を活用して、欧米や日本市場で高い話題性を生み出すコラボレーションマーケティングを展開しているとのことです。

この「文化×グルメ」という従来の業界枠を超えた融合戦略により、同社のブランド「bibigo」はグローバル市場での認知度と好感度を効果的に高めていることが報告されています。このアプローチは、特に韓国食品ブランドのイメージを若々しく、国際的なものへと変革する上で重要な広告戦略となっていると分析されています。

CJ FOODSの文化連携戦略

データソースと分析手法

このレポートで使用されているデータは、Sensor TowerのPathmatics分析ツールによって収集・分析されたものです。Pathmaticsはデジタル広告のエコシステムを詳細に分析し、企業の広告戦略最適化をサポートするサービスとなっています。アメリカ、オーストラリア、ブラジル、カナダ、フランス、ドイツ、イタリア、日本、メキシコ、ニュージーランド、スペイン、イギリスの12カ国のデジタル広告市場をカバーしているとのことです。

Pathmaticsを活用することで、広告出稿状況、広告費、インプレッション数の推計データやシェアオブボイス(SoV)などの指標を把握することができます。また、競合ブランドがどのプラットフォーム(Facebook、Instagram、X(旧Twitter)、YouTube、TikTok、LINEなど)や広告形態(バナー、動画、モバイル、OTTなど)を活用しているかについても詳細な洞察を得ることが可能だとされています。

Pathmaticsは、インターネット上でデジタル広告のサンプルを収集し、統計的サンプリング手法を用いて各広告クリエイティブのインプレッション数、インプレッション単価(CPM)、広告費用を推計するツールとして機能していると説明されています。

Pathmaticsが統計対象とするデジタル広告チャネル(国別)

Pathmaticsの統計対象チャネル

出典元: Sensor Tower プレスリリース

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