
株式会社Nintが、楽天市場・Amazon・Yahoo!ショッピングの国内3大ECモールにおける家電ジャンルの市場規模、売上推移、季節性について調査・分析を実施しました。
同社が提供する「Nint ECommerce」は、3大ECモールの公開データを収集・分析するクラウドサービスです。今回の調査では、2020年1月から2024年12月までの約5年間にわたる売上金額・販売数量データをもとに、家電ジャンル全体および主要10カテゴリーの動向が整理され、EC市場における家電需要の構造が多角的に可視化されています。
この記事の目次
調査結果のポイント
今回の調査から、以下の3点が明らかになりました。
- 3大ECモールにおける家電ジャンルの市場規模は、2020年以降おおむね拡大傾向にあり、ECにおける家電需要は中長期的に堅調に推移していること
- 家電ジャンル全体の需要は12月が最大のピークとなり、加えて3月にも需要の山が見られるなど、年2回の明確な需要期が存在すること
- 年末商戦となる12月はテレビ・加湿器・掃除機など季節性の高い家電が好調となる一方、3月は冷蔵庫・洗濯機など生活必需家電の需要が高まるなど、需要期ごとに売れるジャンルが異なること
3大ECモールにおける家電ジャンルの市場規模と推移
今回の調査における「家電ジャンル」には、以下のカテゴリーが含まれています。
デジカメ(一眼レフ・コンパクト)、テレビ、ドライヤー(ストレートアイロン含む)、加湿器、空気清浄機、炊飯器、洗濯機、掃除機、電子レンジ・オーブンレンジ、冷蔵庫の10カテゴリーで構成されています。

図1の内容を見ると、3大ECモールの市場規模は伸長傾向であることが確認できます。
家電ジャンルの季節指数から見る需要動向
3大ECモールで家電ジャンルが好調であることは把握できましたが、本当に家電は年末商戦品なのでしょうか。
需要度を測る指標として、「季節指数」があります。季節指数は一定期間(今回は各年1月から12月)の売上や、販売数量の平均を100とし、100以上であれば需要が高い月、100以下であれば需要が低い月として判断する指標の一つです。
今回、家電ジャンルを売上による季節指数にて確認し、その推移が分析されました。図2は3大ECモールの家電ジャンルを2020年から2024年の5年間の季節指数推移を各年で確認したもので、図3・図4は家電ジャンルを10のジャンルに分け、2020年から2024年の5年分の各月の季節の平均値をまとめたものです。なお、加湿器ジャンルのみ、季節指数の変動幅が非常に大きいため別図(図4)とされています。



それぞれの特徴を確認していくと、家電ジャンル全体としては、毎年12月が一番のピークを迎えることがわかります(図2)。また、毎年3月にも上昇する傾向が見られます。家電ジャンルの詳細を確認すると、全10ジャンル中7ジャンルにおいて、12月が最も季節指数の高い月であることが明らかになりました。


まさに家電業界の関係者にとって12月は非常に重要な月であることが確認できます。
12月と3月で売れるジャンルは異なる
家電ジャンルの需要期は12月と3月に存在することが分かりましたが、この需要時期に売れるジャンルは同じなのでしょうか。今回は季節指数を用いて、12月の方が売れる(需要が高い可能性がある)ジャンルと、3月の方が売れる(需要が高い可能性がある)ジャンルが分析されました。

分析結果より、以下のジャンルは12月に販売強化をするとより有効ではないかと考えられます。
12月の販売(販促)を強化すると良いと思われるジャンル
- テレビ
- 加湿器
- 空気清浄機
- 掃除機
- ドライヤー
- デジカメ
- 炊飯器
3月の販売(販促)を強化すると良いと思われるジャンル
- 冷蔵庫
- 洗濯機
- 電子レンジ・オーブンレンジ
実際に3大ECモールにおける12月単月の売上・販売数TOP10の推移を確認すると、12月に販売強化をすると良いと思われるジャンルが多くランクインしていることが分かります。


好調ショップと苦戦ショップのジャンル構成の違い
家電市場における重要時期である12月に、市場シェアを上げたショップはどのようなジャンル構成をしているのでしょうか。今回は2024年12月のシェア率が平均シェア率と比べ「高まった」ショップAと、「最も下がった」ショップBのジャンル構成比が分析されました。3大ECモールの売上・販売数量がわかるNint ECommerceの機能を活用し、ショップAとショップBのTOP300商品の違いが確認されました。


好調のAショップは、冷蔵庫(15.7%)やエアコン(11.7%)といった日用的な家電で売上を構成しています。加えて、12月に需要が高まる加湿器も9.6%としっかり押さえており、季節需要を取り込めていることがわかります。
一方で不調のBショップは、ゲーム機やCDなどのエンタメ系が25.7%と売上の4分の1を占めています。これらは競合他社が多く、価格勝負になりやすい領域です。一方で、季節家電は各カテゴリ3から4%程度で分散しているのが特徴です。どうやらこの「日用家電+季節商材」と「エンタメ系偏重」という品揃えの違いが、明暗を分けた一因かもしれないとされています。
家電市場年末商戦のまとめ
家電市場には年間を通して2つ大きな需要期があります。1つ目は12月、2つ目は3月です。これらの2つの需要期は販売ポテンシャルのある商品が異なっている可能性があります。
12月は加湿器やヒーターなど季節需要の高いジャンルが売れる傾向が強く、普段の家電製品に加えて「季節家電」の販売をいかに上手く展開するかが売上創出において重要となります。また、販促方法としては、メルマガ広告を中心に展開することでより高い販促効果が見込める可能性があるとされています。
季節性の高い製品は需要時期を過ぎると一気に売上が低下するため、その数量・需要を見極めることが重要になります。チャンスロスをせずに、必要数を見極め、適正在庫にて売上を創出することが、小売店の売上の明暗をわける要素の一つとなりそうです。メーカーの課題としては、気温により左右される季節商材の需要を予測し、適正な製造数を見極めることが必要になるとされています。
一方で、3月は、冷蔵庫・電子レンジ・洗濯機のような生活必需品の需要が高まるようです。
今まさに始まっている年末商戦について、今年は例年に比べ、年末年始が長いこともあり、旅行や行楽、さらにはクリスマスイベントなど、家電ジャンル以外での競合が多く、消費者の選択肢も多種多様になっているとも言えます。一方で、昨今の世情から、節電家電へのニーズは一層高まっているのも事実です。どのような動きとなるのか、どのようなジャンルの商品が売れるのか、家電業界に身を置く方々は要チェックです。
調査概要
今回調査にあたり抽出したジャンルは以下の通りです。
Amazon:ホーム&キッチン>家電 ジャンル以下一部、大型家電 ジャンル以下一部
楽天市場:家電 ジャンル以下一部、TV・オーディオ・カメラ ジャンル以下一部
Yahoo!ショッピング:家電 ジャンル以下一部、テレビ、オーディオ、カメラ ジャンル以下一部
調査対象:Nint推計データ
Nint推計データは、AIやクローリングなどの技術により日本国内の3大ECモールで販売される商品の売上金額・販売数量を高精度に推計したデータに、サイト内でのプロモーションデータ等を加えた、EC市場の総合的な分析を可能にするビッグデータです。
データ抽出期間:2020年1月から2024年12月(本稿におけるNint推計データは2025年12月時点のものを使用)
Nint ECommerceについて
Nint ECommerceは、AIやクローリングなどの技術により日本国内の3大ECモール(楽天市場、Amazon、Yahoo!ショッピング)で販売される商品の売上金額・販売数量を高精度に推計したデータに、ECモール内でのプロモーションデータ等も加えた総合的なECデータ分析ツールです。
株式会社Nintについて
株式会社Nintは「データで世界を自由にする」というミッションのもと、急拡大するEC市場において、誰もが最適なマーケティング施策を可能とするECデータ分析プラットフォームを実現します。中国・日本のEC市場で10年以上にわたり、EC市場動向に関する推計データを独自に蓄積・提供し、日本で約2,100社のサービス導入実績があります。
代表者:吉野順子
所在地:東京都新宿区西新宿八丁目17番1号 住友不動産新宿グランドタワー37F
設立:2019年2月
事業内容:ECデータ分析サービスの提供
出典元:株式会社Nint プレスリリース












