
株式会社博報堂DYホールディングス(本社:東京都港区、代表取締役社長:西山泰央)の研究部門「Human-Centered AI Institute(HCAI)」は、REVISIO株式会社が保有する広告視聴質データを活用した「CM企画&映像(Vコン)自動生成ツール」を開発したことを発表しました。このツールは博報堂DYグループの株式会社博報堂のマーケティング知見とアンドデジタル株式会社の生成AI技術を組み合わせており、CM制作工程での有効性検証のための社内PoC(概念実証)が開始されています。
広告視聴質データとは、人体認識技術を搭載したセンサーを使用して、1秒単位で生活者のテレビ画面への注視状況を計測・数値化したREVISIO社提供の独自データです。このデータを活用することで、効果的な広告制作が可能になるとのことです。
同社によると、従来のCM制作工程では、生活者の広告注視を獲得するためのアイデア発想やその分析、さらに提案に向けたCM企画資料やコンテ(絵コンテ、映像コンテ)の作成が手作業で行われており、膨大な時間を要していたとのことです。新たに開発されたツールは、REVISIOの広告視聴質データと博報堂DYグループのマーケティング知見、最新のAI技術を融合することで、これらの課題を解消。業務効率化はもちろん、データに基づいたCM制作の提案力強化を実現するとしています。
この記事の目次
CM企画&映像(Vコン)自動生成ツールの主な機能
クリエイティブ視点を取り入れた企画・字コンテ自動生成
同ツールでは、博報堂のクリエイティブディレクターが持つ独自の発想手法・切り口やマーケティングノウハウを学習させた生成AIを活用しているとのことです。示唆に富んだキャッチコピー案の生成から、CM企画・演出構成、さらには細かく尺で割った字コンテの生成までを自動化することが可能とされています。これにより、クリエイティブ制作の初期段階での作業効率が大幅に向上するとしています。
広告データの効率的な活用・分析
REVISIO社が保有する生活者の広告視聴質データに基づき、注目を集めた広告の特徴を形式知化したデータをもとに成功要因を分析するとのことです。このデータ分析により、新たなクリエイティブへの効果的な活用が可能になります。科学的なアプローチによって、より視聴者の注目を集める広告制作を実現できるとしています。
映像(Vコン)などのコンテを自動生成
アンドデジタルの生成AI技術を駆使し、生成された企画案や字コンテに基づいて絵コンテを自動生成。最終的には企画意図に沿った映像(Vコン)などを自動生成するとのことです。この機能により、企画初期段階において多様なクリエイティブ案を迅速に検討することが可能になり、クリエイティブの質と量の両方を向上させることができるとしています。

Human-Centered AI Institute(HCAI)について
同社の発表によると、博報堂DYグループでは、2024年4月に社内外でのAIの先端研究や技術開発を推進する「Human-Centered AI Institute(HCAI)」を設立したとのことです。HCAIを中心としてグループ各社が協働することで、企業や生活者に貢献するAI活用による「人間の創造性の進化・拡張」を目指した取り組みを進めているとしています。
同グループでは、AIを人の創造性を拡張する「パートナー」と位置づけ、広告・マーケティング領域における新たなソリューションの研究を推進しているとのことです。今回の開発はこのビジョンを具現化する重要なステップとなるようです。今後も最先端のAI技術を積極的に取り入れながら、データとクリエイティブの融合による新たな価値創造を通じて、クライアント企業のマーケティング活動を強力に支援していく方針だとしています。
AIとクリエイティブの融合がもたらす広告業界の変革
広告業界においては、クリエイターの創造性とAI技術の融合により、より多様なアイデア検討が効率的に行えるようになることが期待されています。今回開発された「CM企画&映像(Vコン)自動生成ツール」は、単なる業務効率化だけでなく、広告の視聴データに基づいた科学的アプローチによるクリエイティブ提案を可能にするという点で画期的です。
特に注目すべきは、このツールが広告視聴質データを活用した分析により、どのようなクリエイティブが視聴者の注目を集めるかを科学的に把握できる点です。これにより、より効果的な広告戦略の立案が可能になり、広告主にとっても大きなメリットとなるでしょう。
また、CM制作現場においては、クリエイティブプロセスの変革だけでなく、広告コンテンツの質的向上にも寄与することが期待されます。これまで経験や勘に頼る部分が大きかった広告制作において、データに基づいた客観的な判断基準を導入することで、より効果的なコミュニケーション設計が実現します。
人間中心のAI活用を目指す博報堂DYグループの取り組み
博報堂DYグループの「Human-Centered AI Institute(HCAI)」は、その名の通り「人間中心」のAI活用を目指しているとのことです。AIを「人間の創造性を置き換えるもの」ではなく、「人間の創造性を拡張するパートナー」として位置づけるという理念は、今回の開発プロジェクトにも色濃く反映されているようです。
広告・マーケティング領域におけるAI活用は、業務効率化という側面だけでなく、クリエイティブの可能性を広げ、より効果的なコミュニケーションを実現するという点で大きな可能性を秘めています。今回開発された「CM企画&映像(Vコン)自動生成ツール」は、そうした可能性を具現化する重要な一歩と言えるでしょう。
今後も博報堂DYグループでは、AI技術の研究開発を通じて、人間の創造性を拡張し、広告・マーケティング領域における革新的なソリューションの提供を目指していくことが予想されます。AIと人間の共創による新たな価値創造の可能性は、まだ始まったばかりです。
開発パートナー企業について
アンドデジタル株式会社概要
社名:アンドデジタル株式会社
代表者:代表取締役 津田 翔平
所在地:東京都文京区後楽1-4-14 後楽森ビル19F
設立:2015年3月(2021年7月1日よりアンドデジタル株式会社へ社名変更)
事業内容:中堅・中小企業向けのDX支援
REVISIO株式会社概要
社名:REVISIO株式会社
代表者:代表取締役 郡谷 康士
所在地:東京都千代田区大手町一丁目6番1号大手町ビル
設立:2015年3月6日
事業内容:テレビを対象としたメディアリサーチ、テレビCM・番組の効果測定分析サービスの提供
データとAIがもたらす広告制作の未来
広告業界においては、生活者の行動や反応を正確に把握し、それに基づいた効果的なコミュニケーション設計が求められています。特にテレビCMのような高コストメディアにおいては、限られた時間内で最大の効果を発揮するクリエイティブが求められます。
REVISIOの広告視聴質データは、テレビを視聴している生活者が実際にどの瞬間に画面を注視しているかを1秒単位で測定しており、これまで感覚的に語られることが多かった「広告の効果」を客観的に数値化することを可能にしているとのことです。
この客観的データと博報堂のマーケティング知見、アンドデジタルの生成AI技術を組み合わせることで、より効果的なCM企画立案から映像制作までのプロセスが効率化され、同時にクリエイティブの質も向上することが期待されています。
AIによる業務効率化と創造性の拡張は、今後の広告業界において重要なテーマとなるでしょう。特にデータとAIを組み合わせた科学的アプローチによるクリエイティブ開発は、これからの広告制作の新たな標準となる可能性を秘めています。
博報堂DYグループの今回の取り組みは、そうした未来への重要な一歩として注目されます。広告業界におけるAIの活用は、単なる業務効率化にとどまらず、クリエイティブの可能性を広げ、より効果的なコミュニケーションを実現するという点で大きな意義を持っています。
出典:株式会社博報堂DYホールディングス プレスリリース