デロイト トーマツ グループが公表した「2025年度 国内消費者意識・購買行動調査」により、インフレ下の日本における消費者心理の変化が鮮明になりました。本調査は全国の20~79歳の5,000人を対象に行われたもので、生活必需品の支出増加、若年層の推し活消費、配送料への敏感さ、そしてサステナビリティへの距離感など、消費行動の多面的な実態が浮き彫りとなっています。

「物価高」が生活必需品の消費を押し上げる一方で、外食や旅行は抑制傾向

調査では、食料品の消費金額が前年より増加した人が24.6%に達し、そのうち67.4%が「物価高」を理由に挙げています。日用品でも61.9%が物価上昇を理由に支出が増えたと回答しました。

一方で、外食や旅行といった「外向き消費」については節約傾向が強まり、外食で「消費が減った」層は29.9%、旅行では28.8%と、それぞれ前年比で2ポイント前後増加しています。

20代は唯一消費意欲を維持、「推し活」が消費を牽引

世代別の消費意欲では20代だけが「消費を増やしたい」意欲を維持しており、特に「推し活」への支出増意向が12.9%と他世代と一線を画します。また、国内旅行や食料品なども支出を増やしたい分野として挙がっており、若年層ならではの消費行動が目立ちます。

一方、全体的には「消費を増やしたいものはない」と答える割合が増加しており、節約志向の高まりが見て取れます。特に貯蓄・投資への関心が減少し、30代では前年比9ポイント減の22.0%、40代では22.4%と、日々の生活費を優先せざるを得ない状況がうかがえます。

配送料が購買判断の分かれ目、特に中高年層で顕著

ECを利用する際に重視する点として、57.5%が「配送料」を挙げ、特に高年齢層でこの傾向が顕著です。「送料無料でないと買わない」層が必需品や衣料品で約50%を占めており、送料が消費行動の大きな分水嶺になっていることがわかります。

ただし、「送料無料の下限額があれば購入してもよい」(約3割)、「数百円程度の送料は許容する」(約2割)と回答した人も一定数おり、送料無料にこだわりすぎない柔軟な層も存在しています。

サステナブル商品の購入は「価格」が最大のハードルに

「サステナビリティを意識して商品を選ぶ」とした人は約30%で、特に化粧品や衣料品では若年層に意識の高まりが見られます。しかし、「価格が高いから買わない」との回答は年々増加しており、2025年度では食料品で58%、衣料品で57%が「少しでも高ければ買わない」と答えています。

以前はサステナ意識の高かった60~70代女性でも約半数が価格の高さを理由に購入を避けており、物価高によって「エシカル消費」への実行力が後退している様子が見て取れます。

注目ポイントまとめ

  • 67.4%が「物価高」で食料品消費増と回答。外食・旅行は節約傾向。
  • 20代は唯一、消費意欲を維持し「推し活」への支出意向が12.9%。
  • 配送料の有無が購買行動に大きく影響。特に中高年層で傾向が強い。
  • サステナ意識はあっても、価格がネックで実行に移せないケースが増加。

本調査は、企業がマーケティングや商品設計を行ううえで、世代別・価格感度別の戦略設計の重要性を再認識させる内容となっています。特に、「価格」と「付加価値」のバランスをいかに設計するかが、今後の販促施策の鍵を握ると言えるでしょう。

出典:デロイト トーマツ公式リリース(2025年7月)

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