
株式会社パーソル総合研究所は、全国の就業者を対象とした「生成AIとはたらき方に関する実態調査」の結果を公表しました。この調査は、企業における生成AIの活用状況と、業務効率化に向けた課題を明らかにすることを目的に実施されたものです。
調査の結果、全国の就業者における生成AIの業務利用人口が推計で約1,840万人に達することが判明しました。正規雇用者のタスク単位では業務時間が平均16.7%削減されるなど、一定の効果が見られた一方で、実際に業務時間を削減できているのは利用者の4人に1人にとどまることも明らかになりました。さらに、日常的に生成AIを使いこなしている層も1割程度に限られるなど、活用の広がりや組織的な取り組みに関する課題も浮き彫りになっています。
本調査は、生成AIの活用が進む中で、作業の効率化と業務全体の最適化との間にどのような課題が生じているのかを明らかにし、企業が生成AIを組織として活用していくための示唆を得ることを目指して実施されました。

生成AIの業務利用実態
生成AIの業務利用人口は推計で約1,840万人(32.4%)に達していますが、都市部に偏った分布となっています。東京では利用割合が41.4%と突出しており、福井・新潟・高知など20%未満の地域と比べると2倍以上の差が見られます。

日常的に使いこなす週4日以上のヘビーユーザーは11.7%にとどまっています。利用者の内訳を見ると、利用層の中心は「週1〜3日のミドルユーザー」や「月数日以下のライトユーザー」で構成されていることがわかりました。

業種別の利用割合では、情報通信業が61.3%と最も高く、他業種を大きく上回っています。職種別ではIT・開発職が64.5%と突出しており、情報通信業とIT・開発職と他の職種・業種での利用格差が明確になっています。

誰が使っていて、誰が使っていないのか
性年代別では若年層ほど生成AIの利用割合が高く、特に20〜30代男性は4割超と突出しています。しかし、30代以上の女性や高齢層では利用割合が低く、60代女性では1〜2割台にとどまっており、世代・性別による利用格差が確認されました。

職位別に見ると、課長・部長などの管理職で生成AI利用が高い一方、役員・社長など経営層では利用割合が相対的に低い傾向が見られました。企業規模別では、1,000人以上の企業での利用が最も進んでおり、100人未満との差も大きくなっています。

生成AIを使わない理由として、年代共通で上位に挙がるのは「必要性を感じない」「使い方がわからない」「どの業務で使えるかイメージできない」でした。年代や職位によって使わない要因に違いがみられ、若年層では「使い方」、中高年層では「必要性」が上位に挙がりやすい傾向があります。

職位別で見ると、一般職層は「使い方がわからない」「セキュリティ運用リスクが不安」など使い方・不安の壁が相対的に高い一方、経営層は「必要性を感じない」「どの業務で使えるかイメージできない」など必要性・活用イメージ不足が目立っています。

生成AIによる効率化効果とその限界
生成AIを活用したタスクでは平均16.7%(26.4分/週)の時間削減が確認されました。利用頻度別では、週4日以上使用しているヘビーユーザーが平均15.8%(36.6分/週)、週1〜3日使用しているミドルユーザーが平均18.3%(27.0分/週)、月数日以下使用しているライトユーザーが平均17.4%(11.4分/週)の削減となっています。

しかし、実際に業務時間が減少した人は利用者の約25.4%にとどまっています。また、生成AI利用頻度が高い層ほど残業時間は長い傾向にあり、業種・職種・職位を統制した分析でもこの関係が示されています。生成AIは業務時間を短縮する層よりも、もともと残業時間の長い層で多く使われている実態が示唆されました。

生成AIで削減できた時間のうち約6割は「仕事をする」ことに使われており、その中身の多くを「日常の業務(75.4%)」が占めています。改善・再設計、探索といった前向きな業務にも一定程度振り向けられているものの、まずは既存の反復タスクの消化に充てられているのが現状です。

生成AIの成熟度と組織的活用のために
生成AI成熟度を測る独自の項目を用いて分析した結果、成熟度の高い群は低い群と比較して、利用用途の幅が約2倍、削減時間が約2.3倍となりました。

生成AI利用者の多くは、調べ物や情報整理、文章の定型作業など基礎的な用途では一定程度の活用が進んでいますが、複数ツールの組み合わせ、業務プロセスの見直し、新しい発想の拡張といった発展的な活用には利用が広がりきっていません。

生成AIの成熟度別に見ると、利用用途の幅は成熟度高群が平均4.78、中群が2.72、低群が2.15でした。成熟度が高い群ほど利用用途が特定の用途にとどまらず大きく広がっています。また、生成AI成熟度が高い層では、作業の効率性や品質・創造性のいずれにおいても成果が高く、利用用途の拡張が成果の向上と結びついていることが示唆されています。

生成AI成熟度を目的変数として重回帰分析を行ったところ、「問いを楽しむ志向性」「他者に共有する志向性」の2つの特性がいずれも成熟度と有意に関連し、特に「問いを楽しむ志向性」の影響が大きいことが明らかになりました。

企業の生成AI普及の進め方は「仕組み化」「手探り運用」「現場任せ」「統制」の4タイプに分かれ、タイプによって時間削減効果や成熟度、リスク事象の出方が異なることがわかりました。最も多いのは「仕組み化タイプ」(43.3%)で、続いて「手探り運用タイプ」、「統制タイプ」、「現場任せタイプ」と続いています。

生成AIによるタスクの平均削減時間は組織の生成AI普及タイプによって大きく異なり、「現場任せタイプ」が週52.2分と最も高い一方、生成AI成熟度は「仕組み化タイプ」が最も高く、「統制タイプ」では時間削減・成熟度ともに低水準にとどまっています。

生成AIによるリスク事象の発生率は、「仕組み化タイプ」、「手探り運用タイプ」で高い傾向にあります。「仕組み化タイプ」については、生成物の共有やレビューのプロセスの中でリスクが顕在化していることが想定されます。「統制タイプ」は活用度そのものが低く、リスク発生率も低くなっています。

調査結果からの提言
本調査では、生成AIの活用によるタスク単位の効率化効果が、全体の効率化にほぼつながっていない実態が示されました。主な理由は、活用している人の少なさと用途の狭さ、普及のコストがかかっており負担が一部に偏っていること、削減できた時間の多くが日常業務に吸収されていることです。

パーソル総合研究所は3つの提言を行っています。第1に、削減時間を「価値探索」に変えるための「余白時間の使い道」の設計を入れること。AIによる時間削減効果を日常業務の消化で終わらせず、改善・再設計・探索など長期的な付加価値につながる使い道へ流す仕掛けを先に設計することを検討すべきとしています。

第2に、「試す人」×「広げる人」の役割をペアにし、普及を回すこと。AI普及を一部の「詳しい人」や「DX推進部」任せにせず、試行(試す・型化する)役割と、共有(伝える・場づくり)する役割を分担して組み合わせる必要があるとしています。例えばIT/DX(試行)×人事/広報(共有)で回すといった組み合わせで普及させていくことが現実的であり、特に経営層には推進オーナーとして率先的に活用し、旗振り役を務めることが求められます。

第3に、「詳しい人任せ」をやめ、試行と共有が回る組織インフラを整えること。組織としての生成AI成熟度を上げるには、個人の学習努力や各現場での活用に依存することなく、相談・レビュー・根拠確認・テンプレ更新が運用として回る仕組み(組織インフラ)を整備する必要があるとしています。一部の層の非公式の貢献や学習活動に頼る企業も多いですが、負担が偏っている現状は不公平感につながりやすいと指摘しています。


調査概要
本調査は、全国の就業者を対象に実施されました。なお、構成比の数値は小数点以下第2位を四捨五入しているため、個々の集計値の合計は必ずしも100%とならない場合があります。

出典元: 株式会社パーソル総合研究所 プレスリリース













