株式会社帝国データバンクが全国2万5,111社を対象に実施した「トランプ関税による業績への影響」に関するアンケート調査によると、約3分の1の企業が2025年度の業績において減益を予測していることが明らかになりました。特に製造業では4割を超える企業が減益を見込んでおり、世界的な貿易摩擦が企業活動に与えるリスクが浮き彫りとなっています。

調査結果のポイント

この調査は2025年10月20日から31日にかけて、インターネットを通じて実施されました。全国2万5,111社を対象とし、そのうち1万427社から有効回答を得ており、回答率は41.5%となっています。

調査の結果、トランプ関税による2025年度業績への影響について、企業の約3分の1が減益を見込んでいることが判明しました。特に製造業では4割を超える企業が業績悪化を予測しています。一方で、増益を見込む企業はわずか0.7%にとどまっており、世界的な貿易摩擦が日本企業の活動全体に少なからぬリスクをもたらしていることが明らかになりました。

企業の約3割が減益を予測

日米政府間での関税交渉、いわゆる「トランプ関税」が自社の2025年度業績にどの程度影響があると見込んでいるかという質問に対し、5%未満の「軽微な減益を見込んでいる」と回答した企業は18.3%、5~10%程度の「やや減益を見込んでいる」企業は12.1%、10%以上の「大きな減益を見込んでいる」企業は3.0%でした。これらを合計すると、全体の33.4%の企業が何らかの形で減益を見込んでいることになります。

この結果について、企業からは「トランプ関税の影響により購買意欲が低下し、顧客は投資に対して慎重な姿勢がみられる」(建設、宮城県)などの声が複数寄せられています。

他方、「影響はないと見込んでいる」と回答した企業は31.5%で、一定数の企業がトランプ関税による直接的な影響はないと想定していることがわかりました。また、影響が「分からない」とする企業も34.4%と3割を超えており、企業の見解は「影響なし」「減益」「不明」の3つにほぼ均等に分かれる結果となっています。

これに対して、「増益を見込んでいる」とする企業はわずか0.7%にとどまり、関税交渉が企業活動にプラスに作用するケースは極めて限定的であることが示されています。

トランプ関税による2025年度業績への影響グラフ

業界別に見る影響の違い

減益を見込む企業を業界別に分析すると、製造業が42.9%と唯一4割を超える結果となっています。特に自動車関連の「輸送用機械・器具製造」業界では55.2%と、過半数の企業が減益を想定していることが明らかになりました。

これに続いて、「運輸・倉庫」業界が37.6%、「卸売」業界が37.0%となっており、物流や流通に関連する業種でも高い割合で減益が予測されています。反対に、「金融」業界では19.5%と2割を下回る結果となり、業界間で影響の大きさに明確な違いが表れていることがわかります。

世界的貿易摩擦のリスクが浮き彫りに

今回の調査結果から、現時点では「影響なし」または「不明」と回答する企業も多く存在するものの、自動車メーカーを中心に赤字や大幅な減益予想が発表されるなど、トランプ関税による世界的な貿易摩擦が日本企業の活動全体に少なからずリスクをもたらしている現状が明らかになっています。

特に製造業やそのサプライチェーンに関わる企業、輸出依存度の高い業種においては、今後の業績悪化への懸念が高まっています。こうした調査結果は、トランプ関税の具体的な影響範囲や、米国の保護主義的政策の今後の展開がまだ不透明であることを強く反映していると言えるでしょう。

企業の今後の対応策

トランプ関税による影響が予測される中、多くの企業は対応策を検討し始めています。一部の企業では生産拠点の見直しや、調達先の多様化を進めるなど、リスク分散を図る動きも見られます。また、国内市場の開拓や新規事業への展開を加速させることで、海外市場依存度を下げる戦略を採用する企業も増えています。

一方で、日米間の交渉進展を注視しながら、当面は様子見の姿勢を取る企業も少なくありません。今後の政策動向によって企業の対応も変わってくることが予想されます。

製造業における深刻な影響

特に影響が大きい製造業においては、コスト上昇を吸収するための価格転嫁や生産効率の向上など、様々な対策が検討されています。しかし、すでに部品や原材料の価格上昇に直面している企業も多く、関税によるさらなるコスト増は大きな負担となる可能性があります。

自動車関連産業では、特に深刻な影響が予測されており、部品メーカーを含むサプライチェーン全体での対応が求められています。今後、完成車メーカーの減産や投資計画の見直しなどが行われた場合、関連企業への影響も拡大することが懸念されます。

中小企業への波及効果

大企業を中心に影響が表面化しているトランプ関税ですが、その影響は中小企業にも徐々に波及しつつあります。特に大企業のサプライヤーとして機能している中小製造業では、親会社の業績悪化に伴う発注減少や単価引き下げ要請などの二次的影響が懸念されています。

また、輸出比率の高い中小企業においては、直接的な関税負担だけでなく、為替変動リスクも重なり、経営環境の不透明感が増しています。こうした状況下で、政府の支援策や金融機関の融資姿勢なども、中小企業の今後を左右する重要な要素となるでしょう。

今後の見通しと課題

トランプ関税の影響は、短期的には企業業績の悪化という形で現れますが、中長期的には日本の産業構造や国際競争力にも影響を及ぼす可能性があります。特に、グローバルなサプライチェーンの再編や、保護主義的な貿易政策の広がりは、日本企業の国際戦略の見直しを迫るものとなるでしょう。

また、関税問題に限らず、技術移転規制や投資規制など、経済安全保障に関わる政策が強化される中、企業はこれらのリスクを総合的に評価し、柔軟な対応策を準備することが求められています。政府としても、企業の国際競争力維持のための支援策や、二国間・多国間での外交交渉などを通じて、日本企業を取り巻く環境改善に努める必要があるでしょう。

まとめ

帝国データバンクの調査によれば、トランプ関税の影響により約3分の1の企業が2025年度の業績において減益を見込んでおり、特に製造業では4割を超える企業が減益を予測しています。一方で、増益を見込む企業はわずか0.7%にとどまっており、関税交渉が企業活動にプラスに働くケースは極めて限定的です。

業界別では、製造業、特に自動車関連の「輸送用機械・器具製造」業界での影響が顕著で、過半数の企業が減益を想定しています。次いで「運輸・倉庫」「卸売」業界での影響も大きくなっています。

現時点では「影響なし」「不明」と回答する企業も多いものの、世界的な貿易摩擦が企業活動全体にリスクをもたらしている現状が浮き彫りとなりました。サプライチェーンや輸出に与える悪影響への懸念が顕在化する中、トランプ関税の具体的な影響範囲や米国の保護主義的政策の今後の展開が依然として不透明であることが、企業の見通しにも影響を与えています。

今後は政策動向を注視しながら、企業側も様々な対応策を検討・実施していくことが求められるでしょう。

出典元:株式会社帝国データバンク プレスリリース

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