三井住友銀行など8社、セキュリティトークン市場の決済効率化へ「Project Trinity」を開始 - ステーブルコインによるDvP決済実現を目指す

株式会社三井住友銀行(頭取 CEO:福留 朗裕)、大和証券株式会社(代表取締役社長:荻野 明彦)、株式会社SBI証券(代表取締役社長:髙村 正人)、SBI R3 Japan株式会社(代表取締役:藤本 守)、大阪デジタルエクスチェンジ株式会社(代表取締役社長:朏 仁雄)、株式会社BOOSTRY(代表取締役社長 CEO:平井 数磨)、Progmat, Inc(代表取締役 Founder and CEO:齊藤 達哉)、株式会社Datachain(代表取締役 CEO:久田 哲史)の8社が、セキュリティトークンのセカンダリーマーケット(二次流通市場)取引における決済効率化と決済リスク削減を目的とした新プロジェクトを発表したことが明らかになりました。

このプロジェクトでは、ステーブルコインを活用したDvP(Delivery Versus Payment)決済に関する実証実験「Project Trinity(以下、「本プロジェクト」)」が開始されています。本プロジェクトの初期検討は今年4月から一部の事業者によって進められていましたが、このたび参加企業を拡大し、正式にスタートする運びとなったとのことです。

背景と目的

国内・公募におけるセキュリティトークン市場は、2025年7月末時点で累計発行金額が1,938億円を超える規模に成長しています。今後、2025年度からは不動産セキュリティトークンの発行がさらに加速すると見込まれており、税制改正により新たに可能となる動産を裏付けとしたセキュリティトークンの検討も進んでいるようです。

取引市場においては、大阪デジタルエクスチェンジが2023年12月に開設したセキュリティトークンのセカンダリーマーケット「START」が本格稼働し、不動産セキュリティトークンの取引が行われています。今後はセキュリティトークン社債の新規取り扱いなどによる市場規模の拡大も期待されているとのことです。

しかし現状では、セカンダリーマーケットにおけるセキュリティトークン売買代金の証券会社間の資金決済において、セキュリティトークンと資金の交換が同時に行われないため、カウンターパーティ信用リスクが存在するという課題があるようです。

近年、資金決済法に準拠したステーブルコインの発行が現実的になりつつあり、これが証券決済プロセスを将来的に効率化・高度化させるための有望な手段として注目されています。本プロジェクトは、ブロックチェーン上のスマートコントラクトを活用した証券決済のDvP決済を実現し、セカンダリーマーケット取引における決済効率化とカウンターパーティ信用リスクの構造的な排除を実現する第一歩として位置づけられているとのことです。

将来像

このプロジェクトが目指す将来像として、ステーブルコインを活用することで、日中の個別の売買取引に対する約定後即時グロス決済によるDvP決済の実現が挙げられています。これにより、取引相手の不履行に起因するカウンターパーティ信用リスク(CCR)を構造的に排除したセキュリティトークンのセカンダリーマーケット取引が可能になると考えられているようです。

取引成立後、ブロックチェーン上の決済基盤に約定を連携することで約定後即時グロス決済が可能となります。さらに、ステーブルコインを活用することで既存の金融システムのメンテナンス時間に影響されない24時間365日の取引の実現も期待できるとされています。

本プロジェクトでは、上記を将来のあるべき姿として見据えつつも、より近い未来で実現されるであろう「証券会社間におけるステーブルコインを活用したT+2のDvP決済」を当面の目標として定義し、現状からの差分を埋めることを目的として取り組みが開始されています。

将来像とプロジェクトの位置づけ

非DvP決済(現状の決済)とDvP決済

本プロジェクトにおける各参加者の役割

用語解説

セキュリティトークン:ブロックチェーン技術を用いて権利の移転・記録が行なわれる「デジタル化された証券」のことです。従来の証券と比較して、取引の透明性が高まり、取引コストの削減が期待されています。

DvP決済(Delivery Versus Payment):証券の引渡し(Delivery)と代金の支払い(Payment)を相互に条件を付け、一方が行われない限り他方も行われないようにする決済方式です。これにより、決済リスクの低減が図られます。

スマートコントラクト:ブロックチェーン上であらかじめ指定されたルールに従って自動的に実行されるプログラムです。契約の条件が満たされると自動的に実行されるため、仲介者を必要とせず、取引の効率化が図れます。

約定後即時グロス決済:決済取引を集約せず、決済取引1件ごとにリアルタイムで実行する決済手法です。これにより、決済の即時性が高まります。

T+2決済:約定日(Trade date)の2営業日後に決済を行う方式です。現在の証券取引では一般的な決済期間となっています。

プロジェクト参加企業の役割と展望

本プロジェクトでは、各参加企業が持つ専門性を活かした役割分担が行われています。三井住友銀行はステーブルコイン発行体として、大和証券とSBI証券は証券会社として実証実験に参加します。また、SBI R3 JapanとDatachainはブロックチェーン基盤提供、ODXはセカンダリーマーケット運営、BOOSTRYとProgmatはセキュリティトークン発行システム提供といった役割を担っているとのことです。

金融業界では、デジタル化の流れが加速しており、ブロックチェーン技術を活用した新たな金融サービスの創出が期待されています。本プロジェクトは、そうした動きの中で、セキュリティトークン市場の健全な発展に寄与することが期待されています。

また、本プロジェクトで得られた知見は、将来的には他の金融商品の決済プロセスにも応用される可能性があり、金融市場全体の効率化につながることが期待されるようです。

セキュリティトークン市場の現状と今後の展望

セキュリティトークン市場は、日本においても着実に成長を続けています。その背景には、デジタル技術の進化と規制環境の整備があります。2020年5月に施行された改正金融商品取引法により、セキュリティトークンの法的位置づけが明確化され、市場形成の基盤が整いました。

現在、不動産を裏付け資産とするセキュリティトークンの発行が主流となっていますが、今後は企業の資金調達手段としての活用や、さまざまな資産を裏付けとしたトークン化が進むと予想されています。特に、これまで流動性の低かった資産クラス(アート、知的財産権など)のトークン化によって、新たな投資機会の創出が期待されているようです。

また、セキュリティトークン取引のグローバル化も視野に入れた取り組みが進められており、国際的な相互運用性の確保も今後の課題となっています。本プロジェクトで開発される決済基盤は、そうしたグローバルな展開を見据えた重要な取り組みの一つと位置づけられています。

今後の予定

セキュリティトークンのセカンダリーマーケット取引における証券会社間決済において、ステーブルコインによるT+2/DvP決済を業として実現する姿(目指す姿)を見据え、大和証券とSBI証券は実発行のセキュリティトークンの売買取引を、三井住友銀行発行のステーブルコインでDvP決済する業務運用検証を実施する予定とのことです。

本プロジェクトを通じて、ステーブルコインによるT+2/DvP決済の業務を行うのに必要なオペレーション、システム、法令対応を確認・整備するとともに、当該対応にかかる課題と解決策を把握する計画があるようです。

プロジェクトは3つのフェーズを設けて推進することが検討されており、フェーズ1(業務要件定義と次フェーズ以降計画)では以下をゴールとした検討が開始されているとのことです:

  • 目指す姿に向けた業務要件と目指す姿と現状のギャップ(課題)を整理し、解決策の方向性と優先順位を合意
  • フェーズ2(技術検証)及びフェーズ3(業務運用検証)の計画を合意

本プロジェクトにおいて得られた業務運用検証の結果は、適宜市場関係者とも共有し、実際の業務への適用についても検討が行われる予定だということです。

出典元:株式会社Speee プレスリリース

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