
株式会社マイナビが運営するキャリアリサーチラボが、大学生のアルバイトに関する調査を実施し、その結果を発表しました。
<TOPICS>
◆アルバイトをしている大学生の「経済的なゆとりがない」割合は54.8%となり、調査開始以来最高値を記録しました。アルバイトの主な目的は「社会経験を積む」よりも「お金を稼ぐため」が上位となっています。【図1、2、3】
◆一人暮らしをしている大学生のアルバイトによる平均月収は59,000円で、一方で一人暮らしの1カ月の生活費は平均55,200円となっています。【図4】
◆アルバイト収入に関して「年収の壁」を意識して就業調整をしている割合は54.6%に達しています。特に「103万円以下」で就業調整をしている大学生の割合は94.3%と非常に高い数値を示しています。【図5、6】
◆年収の壁については「引き上げるべき」と回答した割合は72.5%に上り、その主な理由として「生活費が高騰しているから」が最多となりました。【図7、8】
この記事の目次
アルバイトをしている大学生の「経済的なゆとりがない」割合が過去最高を記録
キャリアリサーチラボが実施した調査によると、アルバイトに従事している大学生の「経済的なゆとりがない」と回答した割合が54.8%(「あまりゆとりがない」と「全くゆとりがない」の合計)に達したことが明らかになりました。この数値は前年と比較して5.6ポイント増加しており、調査が開始された2022年以降で最も高い数値となっています。
また、同調査では大学生がアルバイトをする目的について複数回答形式で質問しており、「貯金をするため(53.7%)」「趣味のため(52.6%)」「自分の生活費のため(34.0%)」など、金銭的な理由に関する項目が上位を占める結果となりました。一方で「社会経験を積むため(30.4%)」「スキルを身につけるため(16.8%)」「就職活動に活かすため(15.9%)」といった社会経験やスキル習得に関連する項目は、相対的に低いスコアとなっています。
これらの結果からは、多くの大学生がアルバイトを通じて社会経験を得るというよりも、経済的な理由からアルバイトに従事していることが浮き彫りになっています。【図1、2、3】
【図1】

【図2】

【図3】

一人暮らしの大学生はアルバイト収入と生活費の差がわずか3,800円
キャリアリサーチラボの調査によりますと、大学生のアルバイトによる月収は平均で59,100円である一方、希望するアルバイト月収は平均81,800円と、現実と希望の間には22,700円の大きな差があることが明らかになりました。
特に一人暮らしをしている大学生に焦点を当てると、アルバイトによる月収が平均59,000円であるのに対し、1か月あたりの生活費は平均55,200円となっており、実質的な余裕資金はわずか3,800円に留まっています。
この結果からは、一人暮らしの大学生にとって生活費の負担が非常に大きく、アルバイト収入のほとんどが日々の生活維持に費やされていることがわかります。趣味や将来への投資などに回せる余裕がほとんどない状況が浮き彫りになっています。【図4】
【図4】

大学生の半数以上が「年収の壁」を意識して就業調整、その大多数が103万円以下で調整
同調査によりますと、アルバイトに従事する大学生のうち、54.6%が「年収の壁」を意識して就業調整を行っていることが明らかになりました。就業調整をしている学生の中では、94.3%(「100万円を超えないようにしている」と「103万円を超えないようにしている」の合計)が「103万円以下」で収入を調整していると回答しています。
この調査結果から、2025年2月の調査時点において、多くの大学生が「103万円の壁」を強く意識しながら、自身の労働時間や収入をコントロールしていることが明確になりました。これは扶養控除や社会保険の加入条件などの制度的要因が、学生のアルバイト就労に大きな影響を与えていることを示唆しています。【図5、6】
【図5】

【図6】

年収の壁の引き上げを望む声が7割超、最大の理由は「生活費の高騰」
キャリアリサーチラボの調査では、就業調整を行っている大学生に対して「年収の壁の上限額を引き上げるべきだと考えるか」という質問を行ったところ、72.5%(「引き上げるべきだと考える」45.7%と「どちらかといえば引き上げるべきだと考える」26.8%の合計)が「引き上げるべき」と回答したことがわかりました。
「年収の壁の上限額を引き上げるべき」と考える理由について複数回答形式で質問したところ、「生活費が高騰しているから」が44.7%で最も多く、次いで「自分の手取りが増えるから」が44.6%、「最低賃金が上がっているから」が43.2%という結果になりました。
この結果からは、現在の物価上昇や生活コスト増加といった経済環境の変化に対して、学生たちが収入面での制約に課題を感じており、より多くの収入を得られる環境を求めていることが読み取れます。経済的なプレッシャーの中で、学生たちが生活の維持と将来への備えのためにより多くの収入を望んでいる状況が明らかになっています。【図7、8】
【図7】

【図8】

調査担当者コメント

キャリアリサーチラボの研究員である宮本祥太氏によれば、アルバイトをする大学生の厳しい経済事情がうかがえるとのことです。「経済的なゆとりがない」とする割合は過去最高となり、アルバイトの目的は仕事を通じた社会経験よりも「お金を得ること」を重視する傾向が表れています。物価高騰などで生活費を含む支出のベースが上がる中で、アルバイト収入が『生活の足し』というよりも、『生活に欠かせないもの』になっている学生も少なくないのではないかと同氏は指摘しています。就業調整をしている学生の多くが年収の壁を引き上げることを望む結果からも、今よりもっと収入を増やして暮らしにゆとりを持たせたいというニーズがうかがえます。
宮本氏は「学生生活のために必要な金額は人によって様々ですが、「年収の壁」による制限や低い時給が原因で十分な収入を得ることができない状況は本来的ではありません。アルバイトによる収入や経験が大学生活を補完し豊かにするような社会的な賃金の枠組みについて、さらに議論を深めていくことが必要」と述べています。
キャリアリサーチラボ 研究員 宮本 祥太
調査概要
『大学生のアルバイト調査(2025年)』
■調査目的:大学生のアルバイトの実態と意識を明らかにすること
■調査名:「アルバイト就業者調査(2025年)」より大学生サンプルのみ抽出し作成
■調査地域:全国
■調査方法:インターネット調査
■対象者:大学1年生から4年生(※大学院生、専門学校は除く)
■回収数:SC調査:5,031サンプル/本調査:903サンプル
■実施期間:2025年2月17日(月)~2月25日(火)
※調査結果は、端数四捨五入の都合により合計が100%にならない場合があります
出典元:株式会社マイナビ プレスリリース