
株式会社YTGATE(本社:東京都中央区、代表取締役:高橋祐太郎、以下「YTGATE」といいます)は、EC事業者向けに実施している無料診断サービス「決済承認率の健康診断」において、年商30~100億円規模の自社ECを運営する企業100社を対象に診断を行いました。その結果、業界全体の平均承認率は約83.7%となり、約半分の企業が承認率85%未満のCランク以下に位置することが判明しました。今後、診断結果をA~Hの8段階にランク分けし、その分布と特徴を詳しくお知らせいたします。
この記事の目次
決済承認率とは
決済承認率とは、カード決済リクエスト(試行)に対し、最終的に承認(取引成立)に至った割合を示しています。たとえば、100件の決済試行の中で90件が承認され、10件が失敗した場合、承認率は90%となります。
最近では、本人確認やチャージバック管理の強化に伴い、カード会社のリスク回避的な与信判断が増加しています。そのため、本来正規の取引であるにもかかわらず否認されるケースが増えているのです。また、業種や商品単価、カード会社ごとの審査ロジックの違いによって承認率に大きな差が生じることがあるため、単に全体の平均承認率を把握するだけでは効果的な改善策につながりにくいというのが実情です。
診断概要
- 対象企業:年商30~100億円の自社EC保有企業
- 評価方法:決済承認率を以下の8段階で評価
A:100~90%、 B:90~85%、 C:85~80%、 D:80~75%、E:75~70%、 F:70~65%、 G:65~60%、 H:60%以下
診断結果と分布
100社の診断結果は以下の通りとなります。
各ランクに見られる特徴
高ランク(A・B:全体の50.6%)
3Dセキュアの適切な運用や複数のPSPの活用、不正検知ルールの高度な調整により、安定した承認率を実現しています。しかしながら、これらの成果は一時的なものであるため、継続的に月ごと、金額レンジ別、カード会社ごとの承認率やエラーコードの分析を行い、慎重に承認率を維持していく必要があります。特にB評価の事業者は承認率が高い一方で、取扱高が多い場合には、わずかな改善が売上に直結することがあります。したがって、安定した運用を維持しつつ、更なる改善の余地を探ることが不可欠です。
中ランク(C・D・E:全体の42.1%)
決済承認率は70~85%に集中しています。多くの企業が不正対策を導入していますが、さまざまな要因によって承認率が低下しやすい傾向があります。このゾーンは改善の余地が大きく、診断結果をもとにルール最適化やPSP設定の見直しを行うことで、即効性のある改善効果が期待されるのです。
低ランク(F・G・H :全体の7.2%)
決済承認率は65%未満に留まり、売上や顧客体験に深刻な影響を及ぼしています。特に、転売リスクが高いブランド品や限定商品を取り扱うEC事業者に多く見られます。
カテゴリ別の特徴
アパレル | A~Bが多く安定していますが、高額商品やセール時期には一時的にEランクに落ちることがあります。 |
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健康食品 | サブスク型が多く、初回の3DSエラーによって承認率が低下する傾向(FやGも見受けられます)。 |
日用消耗品 | B~Cが中心で、購買頻度が高いため不正リスクは比較的低く、安定傾向です。 |
旅行代理店 | C~Dが中心で、海外BINや高額決済によりエラーが発生しやすく、季節変動の影響も大きいです。 |
美容・化粧品 | Bランクが多く存在しますが、ブランド品を取り扱う場合、転売目的の不正利用でE以下に落ちるリスクがあります。 |
SaaS/セキュリティソフト | D~Eが多いです。継続課金型のため初回エラーがLTVに直結します。 |
飲食品EC/ファストフード | A~Bが中心です。日常的に使用される商材のため、承認率は高いですが、高額商品(ギフト系)は低下傾向にあります。 |
チケット販売 | Cランクが多いとされています。転売目的でのカード利用が多く、不正検知を強化すると承認率が下がる傾向があります。 |
家具・インテリア | B評価が多く、高額商品のため3DS導入初期に承認率が低下することが見られます。 |
中古品EC | A~Bもありますが、ブランド品系ではE~Fに落ちる事例も多く、商材リスクによるばらつきがあります。 |
百貨店 | C~Gまで幅広く、そのため、高額商品が多くGランクに落ちる事例も確認されています。 |
PC・モバイルゲーム/動画配信 | A~Cの評価が多いです。短期間で大量の決済が発生するため、カード発行会社(イシュアー)ごとに承認方針の違いが数値に影響しやすいです。 |
ふるさと納税 | B評価が多いです。公共性が高く、比較的安定性があります。 |
証券・FX | D~Eが多く、与信厳格さから承認率が低めである傾向があります。 |
3Dセキュアの導入有無による決済承認率の変化
3Dセキュアを導入した企業では、全体的に決済承認率が低下する傾向が見られています。多くの企業が90%前後に集中しており、B~Cランクに位置していますが、一部の企業では3Dセキュア特有のエラー増加によってCランクからD・Eランクに低下する事例も確認されました。つまり、導入は不正対策において効果がありますが、運用設計が不十分な場合、承認率にネガティブな影響を及ぼす可能性があることが示されています。
まとめ
診断結果に基づく業界全体の平均承認率は約83.7%であることが確認されました。特に、2万円以上の高額取引においては、決済承認率が明显に低下する傾向が顕著です。また、カード発行会社(イシュアー)ごとに観察された承認率は、30%台から90%台まで幅広くばらつくことが明らかになりました。これらの結果から、金額レンジやイシュアーによる構造的な決済承認率の差異が、EC事業者の売上や顧客体験に直結していることが分かります。
決済承認率は「見えない機会損失」となり、数%の改善が数億円規模の売上に影響を与える場合もあるのです。高額商品やサブスクリプションモデルを展開する企業は特に、決済承認率の把握と改善の重要性が高まっています。「健康診断」を入り口とし、YTGATEでは承認率の改善および不正対策の最適化に向けた具体的な支援を提供しています。
出典元: 株式会社YTGATE プレスリリース